平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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神保喜利彦『東京漫才全史』(筑摩書房 筑摩選書)

 現在も人気のある日本の伝統的芸能「漫才」には「お笑い論」の書籍は数多く存在するが、「漫才」の、特に東京を地盤とした漫才の歴史に関する書籍は数少ない。この「東京漫才」に焦点を当て、漫才の源流にまで遡り、「東京漫才の元祖は誰か?」、「しゃべくり漫才流入と定着」、「戦後東京漫才の御三家」、「東京漫才専門寄席」、「MANZAIブームの功罪」、「爆笑問題、ナイツの活躍」等をテーマに、その発生と栄枯盛衰を、通説の誤解を正しつつ記した、画期的な「東京漫才」通史。(粗筋紹介より引用)
【目次】
序章 「漫才」以前
第一章 東京に漫才がやってきた
第二章 生まれる東京漫才
第三章 戦前の黄金時代
第四章 戦争と東京漫才
第五章 焼け跡から立ち上がる
第六章 東京漫才の隆盛
第七章 MANZAIブームと東京漫才
終章 新しい東京漫才の形

 漫才師研究家として活躍している神保喜利彦が、満を持してまとめたと言っていい東京漫才の全史。明治の東京漫才のはじまりから、黄金時代、戦後の東京漫才隆盛、MANZAIブーム下の衰退、その後の隆盛ぶりなどを一冊にまとめている。
 今までの通説と言われていたものを検証し、残されている資料を一つ一つ当たり、ご存命の関係者から証言を取りつつ、これだけの歴史をまとめたのは凄いの一言に尽きる。写真などの史料価値も非常に高い。
 そして凄いのが、当時の漫才師たちがどのようなネタをやっていたかについてまで書かれていること。どのように調べたのだろう。どれぐらい時間がかかったのだろう。ただ好きなだけではできないだろう。まさに執念を感じる。
 労作、という言葉がピッタリくる一冊。「漫才」の歴史を語るのであれば、まずはこの本に目を通すこと。そう言い切っていいだろう。何度でも読み返したい本だ。別の形で第二弾、第三弾と研究・調査結果を出してほしいものである。