平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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パミラ・ブランチ『死体狂躁曲』(国書刊行会 奇想天外の本棚)

 チェルシーに住む二組の芸術家夫婦が、初めての下宿人であるベンジャミン・カンを隣家から迎えることになった。だがしかし、その隣家とは、クリフォード・フラッシュによって設立された、法廷で無罪放免となった殺人犯たちが生活を営むアスタリスク・クラブの本部であった! ところが、カンが下宿を始めた翌朝、あちこちにネズミが出没する下宿の自身の部屋で息絶えたカンを、芸術家の妻ファンが発見する。カンとの連絡が途絶えたことを不審に思ったフラッシュは、リリー・クルージを新たな下宿人として送り込むが、リリーとも連絡がとれなくなってしまう。下宿人を迎え入れるたびに次々と死体になっていくことで疑心暗鬼となり恐慌をきたした夫婦たちが死体の処分を巡って右往左往の大騒ぎを繰り広げるいっぽう、二人が殺害されたことを知ったアスタリスク・クラブの面々は、秘密裡に死体を取り戻すべく芸術家宅への侵入を企てる…… 熱烈なファンを生み出し、近年再評価の著しいパミラ・ブランチによる、ブラック・ユーモアをふんだんにちりばめたクライム・コメディの傑作!(粗筋紹介より引用)
 1951年、イギリスで発表。2022年11月、邦訳刊行。

 パミラ・ブランチはイギリスのミステリ作家。1951年、本作でデビュー。ミステリ4冊を刊行。1967年、47歳の若さで亡くなる。クリスチアナ・ブランドの親友とのこと。海外でも知名度は低かったが、21世紀になって再評価。2006年にA Rue Morgue Vintage Mysteryが全4作品を復刊。2009年には本作がデヴィッド・テナント主演でBBCラジオ4にてドラマ化された。
 全く聞いたことのない作家で、帯に「多すぎる囚人、多すぎる証人、多すぎる殺人者、多すぎる死体!!」とあるから何ぞやと思ったら。
 死体を巡るブラックユーモアドタバタコメディなのだが、出てくる人物がみんな癖のある者ばかりで、読者からしたらその言動と行動に着いていくのに疲れてしまう。さらに死体がどんどん出てくるのに、犯人を探さず、死体の処理にてんやわんやするって、何を考えているんだろう。
 中盤がややだれ気味で、彼らに付き合うにはちょっと長かったかな。こういうのはもっと切れ味鋭く決めないと、読み続けるのが少々しんどい。映像で見た方が笑えそう。それとネズミはもう勘弁してほしい(苦笑)。
 残りの作品もこんな感じなのだろうか。発表当時は受け入れられなかったのも、なんとなくわかる気がする。