坂口征二喜寿(77歳)記念出版
「世界の荒鷲」初の公認バイオグラフィー
「柔道、プロレス、すべての時代の私が詰まっている」──坂口征二
柔道日本一から、鳴り物入りでプロレス界へ転向。ジャイアント馬場・アントニオ猪木とタッグを組んでトップレスラーとなり、新日本プロレスの社長・会長としてプロレス界を支え続けた「世界の荒鷲」のすべて。
「坂口征二──この名前は私の格闘技人生そして人生闘争にとって決して欠かせず消せない4文字です。昭和48年、彼が旗揚げ間もない新日本プロレスに入った時から、私はこの4文字の男に支えられてきたのです」
アントニオ猪木(坂口征二引退記念写真集『黄金の軌跡』より)
2019年1月、刊行。
第一章 人生のはじまり
第二章 九州に坂口あり
第三章 柔道日本一への道
第四章 天皇杯とプロレス
第五章 日本プロレスの金の卵
第六章 坂口ブームからビッグ・サカへ
第七章 坂口征二の昭和四七年
第八章 猪木とのドッキング
第九章 自ら選んだナンバー2の道
第一〇章 猪木と会社のために
第一一章 世代交代
第一二章 社長就任
第一三章 荒鷲経営
第一四章 坂口会長
「世界の荒鷲」坂口征二の公認バイオフィラフィー。作者の佐々木英俊は1983年に坂口征二ファンクラブ「荒鷲」を立ち上げ、会長を務める。1992年2月には坂口征二プロレス生活25周年記念誌『黄金の荒鷲』を自費出版している。
坂口征二の生まれからの軌跡を追った一冊。柔道日本一、日本プロレス入団、タイトル獲得、新日本プロレス移籍、社長就任、新日本プロレス黒字化、会長就任、坂口道場経営までが書かれている。
坂口公認、ということで坂口自身の確認が行われているし、作者もファンクラブ会長だから、坂口のいいところしか書いていない。坂口自身の問題点などについては全然書かれていない。それはまだしも、坂口からの批判や悪口らしきものも全然ない。大木金太郎との確執についてはもちろんだし、山本小鉄との不仲についても触れられていない。坂口の妻と不仲だったという馬場元子との話も全然ない。北尾光司や小川直也にはもっと言いたいこともあるだろう。
確かにナンバー2として猪木、新日本を支え、さらに社長として新日本の経営を立て直したことは事実。特に猪木が参議院議員となってプロレスから離れていた時期の新日本プロレス立て直しは見事としか言いようがない。ただ、実際にはもっとドロドロしたものもあったと思う。日本プロレス末期、それに猪木に振り回された時期、相次ぐ退団など、坂口自身の苦悩や葛藤なども読みたかった。
どうせ書くなら、どんぶり勘定経営だった新日本プロレスをどう立ち直らせたか、という点についてももっと突っ込んでほしかった。坂口征二という人物がいたため、会社組織として発展していった新日本。逆に最後まで馬場商店のままで終わってしまった全日本。この対比を坂口自身の口から聞きたかった。
言いたくはないが、坂口のよいところだけを集めてまとめた一冊。もちろん、そういう物を作者は書きたかったのだから当然なのだが、もうすこし坂口の裏面にも迫ってほしかったとは思う。例えば、キラー・カーンのことをどう思っているかとか。