平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』(創元推理文庫)

 ある日、ヒースロー空港のバーで、離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに声を掛けられる。彼は酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」と漏らす。話を聞いたリリーは、ミランダは殺されて当然と断じ、殺人を正当化する独自の理論を展開してテッドの妻殺害への協力を申し出る。だがふたりの殺人計画が具体化され、決行の日が近づいたとき、予想外の事件が起こり……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防が語られる鮮烈な傑作犯罪小説。(粗筋紹介より引用)
 2015年、アメリカで発表。作者の第2長編。同年、英国推理作家協会(CWA)賞のイアン・フレミング・スチールダガー部門最終候補に残る。2018年2月、邦訳刊行。

 

 評判がよかったので手に取ってみることにした。
 ストーリーそのものは実に単純。実業家で裕福なテッド・セヴァーソンは新築を建てることにしたが、妻のミランダが工事業者のブラッド・ダゲットと浮気をしているところを目撃してしまった。テッドは空港のバーで声を掛けてきた大学の文書保管員であるリリー・キントナーにそのことを話し、妻を殺したいと告げる。するとリリーはミランダを殺すべきと話し、殺人計画に協力する。しかし決行の日が近づいたときに事件が起こる。陳腐な話と言ってもいいだろう。ところが読んでいて目を離せなくなるのだから、作者の料理の仕方がうますぎる。
 三部仕立てになっており、どの部も二人のモノローグで話が進んでいく。登場人物がエキセントリックな人たちばかりであり、特にリリーの性格と過去は強烈だ。それでもリリーという人物に不快感を抱かせないのは見事。
 陳腐な話なのだが、読んでいくうちに先が気になって仕方がなくなる。ただ第一部、第二部と比較すると、第三部の進み方はちょっと残念。もっと別のやり方があったのではないかと思ってしまうのだが。それでも十分に楽しめた。
 特に大掛かりな仕掛けがあるわけでもなく、派手なドラマがあるわけでもないのに、目が離せない。絶賛されるのがわかるサスペンスであった。