平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ギジェルモ・マルティネス『オックスフォード連続殺人』(扶桑社ミステリー文庫)

 アルゼンチンからの奨学生として、オックスフォード大学に留学した「私」は22歳。渡英したのもつかのま、下宿先の未亡人の他殺死体を発見してしまう。一緒に第一発見者となった世界的数学者セルダム教授のもとには、謎の記号が書かれた殺人予告メモが届けられていた。その後も、謎のメッセージを伴う不可能犯罪が矢継ぎ早に起こって……。知の巨人セルダムの叡智がいざなう、めくるめく論理のラビリンス。南米アルゼンチンから突如現われた、驚愕の本格ミステリーに瞠目せよ。(粗筋紹介より引用)
 2003年、発表。アルゼンチン・プラネタ賞を受賞。2006年1月、邦訳刊行。

 アルゼンチンの人気作家による本格ミステリ。論理専攻の数理科学で博士号を取得しており、オックスフォードに2年間の留学経験もある。そのせいだろうか、作品中では数学の論理や定理にまつわる話や議論が色々出てくる。それに惑わされると作品自体が詰まらなくなってしまうが、これも作品の一部と割り切って読まなければいけない。かなり苦痛だったが。
 連続殺人に殺人予告、暗号など、様々な本格ミステリの道具立てが出てことを不思議に思いながら読んでいたが、作者はミステリファンだとのこと。なるほどとは思うが、本作品を読んでいると、ある有名な傑作が頭に浮かんでくる。その裏話は解説の千街晶之が解き明かしてくれている。当然ネタバレなので、本作品を読んでから目を通さなければいけない。
 留学生である主人公の「私」(名前は出てこない)が、数学を学ぶことより彼女の方に気を取られているのはどうかと思うが、まあいつか見た本格ミステリ、という懐かしさを持って読めばそれなりに楽しめるかな。悪い作品ではなかった。