平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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高崎計三『平成マット界 プロレス団体の終焉』(双葉社)

 猪木・新日本と馬場・全日本の2団体時代を経て、百花繚乱が彩った平成のマット界。その終焉、幕引きには必ずドラマがあった! 13団体の関係者が語った内情と舞台裏。(帯より引用)
 ジャパン女子プロレス/SWS/新格闘プロレス/W★ING/UWFインターナショナル/FFF/キングダム/レッスル夢ファクトリー/FMW/WJプロレス/全日本女子プロレス/NEO女子プロレス/IGF
 『俺たちのプロレス』2014~2019年連載に加筆訂正のうえ、書下ろし3団体を加え、2023年3月、刊行。

 平成に入った時に残っていたプロレス団体は、設立順に全日本女子プロレス新日本プロレス全日本プロレスジャパン女子プロレス、UWFの5つだった。平成に入り、パイオニア戦士が旗揚げ。そしてFMWが旗揚げし、インディー団体の歴史が幕開けする。さらにユニバーサル・プロレスリングが設立され、ルチャリブレのスタイルが日本にも広まった。UWFの崩壊、そしてSWSの設立と崩壊により、プロレス団体が乱立されるようになる。地域密着型の団体が増え、会社形式ではないプロモーションも増えていく。メジャー団体も分裂し、新日本、全日本から別団体が誕生するようになる。
 平成に設立され、会社形式で休止せずに続いているのは、みちのくプロレス大日本プロレス、DDT、DRAGONGATE、プロレスリング・ノア、ZERO-1、アイスリボン九州プロレスNPO法人)、プロレスリングFREEDOMS、センダイガールズ、OZ、WAVE、スターダム、ディアナ、我闘雲舞東京女子プロレス、HEAT-UP、琉球ドラゴンプロレスリングPURE-Jあたりだろうか(他にあったらごめんなさい)。
 本書は平成で終焉を迎えたプロレス団体の内情と舞台裏に迫ったものである。
 正直言うと、プロレスラーなんてエゴの塊といっていいだろう。そんなプロレスラーが多数集まれば、どうしても衝突がある。それをうまくかじ取りするのがフロントなのだが、我儘なプロレスラーを押さえるのは苦労なんて言葉じゃ済まないぐらい、大変なことだろう。さらにプロレス団体が必ず儲かるとは限らない。いや、むしろ儲からないと思った方が早いのではないか。旗揚げ戦、二戦目ぐらいは儲けることができても、それを続けることは難しい。儲かれば儲かったで、今度は金を巡っての争いが始まる。SWSの崩壊は、プロレスラーのエゴのぶつかり合いといってもいいものだったのだろう。自らの集客力を誤解するものばかり、それがプロレスラーである。
 本書は、主に団体経営者からの視点によるプロレス団体の崩壊を書いている。どうしてもスキャンダラスな内容になりがちなところを、ページ数が少ないというせいもあるだろうが、事実と証言を中心に抑えた筆致で書かれているため、若干の物足りなさはあるものの、冷静な視点で読むことができる。
 FMWの荒井社長や全日本女子プロレスの松永社長は、借金を重ねて倒産後、団体解散後に自殺を選んでいる。UWFインター、キングダムの鈴木社長は負債2億円を高田延彦と分け、鈴木は10年、高田は8年で返したという。他にもWJも経営者たちが巨額の負債を抱えている。SWSの崩壊の過程は有名だ。FFFは旗揚げ前に経営者が本業で借金を重ねて逃亡した。本巻では新たにレッスル夢ファクトリーの高田元社長からも内情を語ってもらっている。
 こうしてみると、プロレス団体を経営して、一時はうまくいくことがあっても最終的には悲惨な状態になっていることが多い。平和に終わったのは、NEO女子プロレスぐらいだろうか(それでもドタバタはあったが)。それでもプロレスの魔力は麻薬に等しい。プロレスラーはいろいろな形でプロレスを続け、スタッフもまた多くはプロレス団体に関わるのだから。
 めったに巧くいかないのがプロレス団体。それでも増殖し続けるプロレス団体、プロモーション。一度スポットライトを浴びると辞められないだろうし、そんなプロレスラーの一瞬の光に誘われる者は多いのだろう。まるで焼かれると分かりながらも火に近づく蛾のように。