湖のほとりに建つ
2018年、中国で発表。2023年9月、邦訳刊行。
作者の
名家での連続殺人事件。しかもすべて密室殺人。それを解くのは、人気漫画家で警察の非常勤似顔絵師であり、過去に捜査に協力して密室殺人を何度も解決したという
大雨でほぼ水没していた半地下貯蔵室、見張りのいた室内、湖の岸辺にある空中コテージ。いずれも密室殺人が起きた現場である。しかも最後は斬首されている。しかし密室トリックについては強引そのもの。一番目の密室トリックは絶対に実現不可能。二番目は笑っちゃうしかない。三番目は、もう考えるのを止めた。
内容が、戦後初期に本格探偵小説ブームが始まってから数年後に出されたような出涸らし感がある。そういう意味では懐かしさを感じさせるし、すんなりと読むことはできた。因習に引きずられる旧家での連続殺人という設定は懐かしさを感じたし、フーダニットの部分はそれなりに楽しめたが、だからといって絶賛できるような内容ではない。
探偵役が人気漫画家、ヒロインが新人声優というところだけは現代っぽさを感じたかな。あざとすぎるぐらいな終わり方は、さっさと続編をかけよと言いたくなるようなもの。なのにまだ書いていないというのは、どういうことなんだろう。
今まで読んできた華文ミステリと比べると、投稿サイトから本になったような素人っぽさを感じさせた。作者の単行本そのものが少ない理由なんじゃないかな、それが。