地上二十階建てのウィントンパレスホテルの最上階、2010号室に泊まっている男性にプレゼントを渡してメッセージを伝えるだけ。真莉亜はびっくりするくらい簡単な仕事だと、殺し屋の「天道虫」こと七尾にそう言った。しかしとびきり不運な殺し屋の七尾が、簡単に仕事を追えるはずがなかった。
乾の会社の事務員で、なんでも記憶することができる紙野結花。その紙野から依頼され、逃がすためにやってきたココ。紙野を強奪するためにやってきたエド、センゴク、ヘイアン、カマクラ、ナラ、アスカの六人組。ココから依頼され、紙野を逃がす手伝いに来た高良と奏田。乾の部下で、清掃ついでに殺し屋もするマクラとモウフ。元国会議員で、現在は情報局長官である
東京のホテルを舞台に、非合法な者たちが集まってくる。
2023年9月、書下ろし刊行。
殺し屋シリーズ第4弾。『マリアビートル』に登場した不運な殺し屋、「天道虫」こと七尾が、「簡単な仕事」の実行中にまたまた巻き込まれる。前回は新幹線から降りられなかったが、今回は超高級ホテルから出られない。
今回もまたリアリティのない、というか戯画的な登場人物たちが、戯画的な展開を繰り広げる。視覚で楽しむような内容を、文字で楽しむ。徹底的な娯楽作品であるが、最後にひねりを聞かせてくれるのは伊坂流。
シリーズファンならいつも通りの楽しさに酔っていればいいけれど、なんとなく『マリアビートル』の焼き直しという印象しか出てこない。面白いことは面白いんだけど。