平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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D・M・ディヴァイン『五番目のコード』(創元推理文庫)

五番目のコード (創元推理文庫)

五番目のコード (創元推理文庫)

 

  八人がわたしの手にかかって死ぬだろう――スコットランドの地方都市ケンバラで、女性教師が何者かに襲われた。この件を皮切りに連続殺人の恐怖が街を覆う。現場に残された、八つの取っ手(コード)がついた棺の絵のカードは何を意味するのか? 弱者ばかりを標的にしたこの一連の事件を取材する新聞記者ビールドは、複数の犠牲者と関わりを持っていたため警察に疑われながらも、自身の人生とキャリアを立て直すために事件を追う。謎の絞殺魔の恐るべき真意とは。読者を驚きの真相へと導く巧者ディヴァインによる傑作。(粗筋紹介より引用)
 1967年発表。1994年9月、現代教養文庫より邦訳刊行。2011年1月、創元推理文庫より刊行。

 

 現代教養文庫で『兄の殺人者』とか出たころ、結構評価されていたけれど、出版社が倒産してそれっきりになっていた。久しぶりにディヴァインを読んでみたけれど、結構面白い。
 本作はかつて大手新聞社の記者で小説も書いていたが、今は田舎の新聞記者が主人公。酒浸り、女好きでどことなく破滅的な人物だが、それでいてどことなく母性本能をくすぐるようなところがちょっとうらやましい。それでいて行動力もあり、本作でも(時には尻を叩かれながらも)事件解決に奔走する。
 主人公だけ見るとハードボイルドっぽいが、謎のほうは本格ミステリ。連続殺人犯はだれか。小さな地方都市での人間ドラマを繰り広げながらも、ジェレミー・ビールドの活躍で意外な犯人が捕まり事件は解決する。さらに、ビールドとヘレン・ローズとの大人のロマンスがなんとももどかしい。謎解きとラブロマンスの両方が楽しめる。
 かつて現代教養から出ていた作品は復刻され、未訳だった作品もどんどん訳される。作者も発表してから50年経って、遠く離れた日本で高評価を得ているとは思いもしなかっただろう。