歴史学者モーリスは、幼馴染の人気作家ジョフリーに招待されて、彼の邸宅(ガーストン館)に滞在することになった。実際は彼の妻ジュリアから、夫の様子がおかしいと訴えられての来訪だった。ジョフリーは兄ライオネルから半年にわたって脅迫を受けて悩んでおり、また、時を同じくして進む日記の出版計画が、館の複雑な人間関係にさらなる緊張をもたらしていた。そしてある晩、ジョフリーは行方不明になり、ライオネルもまた姿を消した。才能と頭脳、行動力全般に秀でたジョフリーに対して、少年時代から複雑な思いを抱くモーリスが見出した彼の意外な秘密とは。パズラーの好手がいかんなく腕を振るう、英国探偵小説の王道。(粗筋紹介より引用)
1981年、英国で発表。2008年8月、邦訳刊行。
ディヴァインを色々読もうと思って、買ったままになっていた本を取り出す。本作はディヴァインの最後の長編で、出版される前年に亡くなっている。
田舎町の屋敷で繰り広げられる人間模様。英国本格らしいユーモアがまったくなく、ドロドロした人間関係はむしろ日本の作品に近い印象を与える。殺人事件の展開があまりにもゆっくりとしているのは、英国らしいと言えるか。スコットランドヤードのカズウェル警視の言動があまりにもちんたらしているので、読んでいて鬱陶しい。わかっているのなら少しは対策しろよと言いたくなる。<br>
被害者を取り巻くどろどろの人間模様が明らかになり、さらに探偵役のモーリス自身も巻き込まれ、犯人が誰だかわからないまま終盤の事件をきっかけに謎が解き明かされる。大したトリックがあるわけでもないが伏線の張り方が巧く、最後に解き明かされる解決にはちょっと驚いてしまった。ただ、犯人の明かし方をこういう形にしなくてもという気がしなくもないが。
読みごたえはある作品。確かに面白い。ただ、本格ミステリとして読むと謎が少なく、ちょっと物足りなさがあるかも。