平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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葉真中顕『絶叫』(光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。平凡な人生を送るはずが、無縁社会ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ……。辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!? ミステリー、社会派サスペンス、エンタテインメント。小説の魅力を存分に注ぎ込み、さらなる高みに到達した衝撃作!(粗筋紹介より引用)

2014年10月、光文社より単行本刊行。2017年3月、文庫化。



日本ミステリー文学大賞新人賞史上、最も傑作と思える『ロスト・ケア』で第16回新人賞受賞後の第1作。

平凡すぎる平凡な女性、鈴木陽子。マンションで孤独死体となって発見された鈴木陽子の足跡を追う国分寺警察署刑事課の奥貫綾子。NPO法人代表理事の神代武が殺害された事件の証言。3つのストーリーが並行して進んでいく。

親子関係、いじめ、バブル崩壊、失踪、生活保護行政の闇、保険業界の裏側、インチキNPO法人、売春、DV、セクハラ、縦割り行政、警察の地域連携不足、家族……ええっと、他に何があったかな。とにかく、社会問題をこれでもかとつっこみ、かつサスペンスあふれるエンタテイメントに仕立て上げたのはお見事としか言いようがない。それなりに厚い本だが、全然苦にならなかった。

気になるのは、印象のギャップかな。あそこだけはどうしてもつながらなかった。それでも、これだけの作品を作ってくれたのであれば満足。