- 作者: 高木彬光
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/06/13
- メディア: 文庫
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1961年5月、東都書房の東都ミステリーの一冊として書き下ろされ刊行。さらに「婦人公論」1962年1月号に掲載された、百谷シリーズ唯一の短編「遺言書」と、「宝石」他に載ったエッセイを収録。
私は、高木彬光こそが日本一のミステリ作家だと思っている。ミステリの様々なジャンルにおける代表作といえる名作、傑作を数多く残し、通俗ものや少年ものも含め数多くの作品を残し、デビューから晩年まで新しいことにチャレンジし続けてきた作家は、高木彬光しかいない。日本で「もっとも偉大な」作家となると江戸川乱歩や横溝正史、もしくは松本清張の名が挙がる(他の作家を挙げたい方は、ご自由にどうぞ)だろうが、作品としての実績は、その誰もが高木彬光には届かない。私はそう考えている。なお、異論は受け付けない(笑)。
私は日本ミステリ史上、もっとも優れた作品は『人形はなぜ殺される』だと思っているが、高木彬光の最大傑作は、と聞かれると本作を挙げたい。被告人である村田和彦に対する弁護人質問からの怒濤の展開は、高木彬光全作品の中でもっとも光り輝く名場面である。地味に、そして退屈になりやすい法廷シーンを淡々と描写し続ける作品なのに、この驚きは何だろう。この感動は何だろう。何回、何十回読んでも、この感動が色褪せることはない。
法廷ミステリの原点であり、今なお頂点に燦然と輝く傑作。この作品を読まずして、法廷ミステリを語る資格はない。