- 作者: 連城三紀彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: 文庫
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2002年3月、朝日新聞社より刊行された単行本の2008年文庫化。
連城作品を読むのはいつ以来だろう。少なくとも15年以上は読んでいないはずだ。
一人の女の子が殺害された事件を通し、物語の語り手が次々と変わっていく。そのいずれもが事件の関係者であり、しかも殺人の動機を持っている。一人の告白や独白で、事件の全体像は次々変わっていく。事件の全体像に矛盾無く、それでいて全体像が次々と変わっていく構成は見事。複雑に絡み合った人間心理と恋愛感情を、いとも簡単に操ってしまう筆の巧みさにも、さすが連城と唸ってしまう。
ただ、小説の登場人物に感情移入してしまう人には、少々読むのがキツイかも。人の誰もが心の奥底に秘めている闇の部分が、悪意とともにさらけ出されるのを読むのは精神的にちょっとしんどくなる。特に母親が不倫をしている間に小さな子供が殺されるという話を読むのは、小説の出来とは無関係なところで苦手である。
技巧溢れる、という言葉がぴったり来る作品。ただ、個人的にこういう作品は読みたくなかった。そういう意味では個人的に失敗だった。まあ、それだけ作品の出来がよいということなんだろうが。