平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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笹本稜平『破断 越境捜査3』(双葉社)

越境捜査3 破断

越境捜査3 破断

警視庁捜査一課特別捜査一係の鷺沼友哉。神奈川県警瀬谷警察署刑事課の宮野裕之。ふたりの“一匹狼”が、みたび手を組んだ。

10年前に行方不明となっていた右翼団体の大物・湯浅慶三郎が、白骨死体で発見された。拳銃自殺と断定されたが、現場に赴いた宮野は、その拳銃は警察官が使うニューナンブではないかと疑念を持つ。民間に出回るはずのない拳銃。ちらつく公安警察の影。続く重要人物の死。捜査の行く手を阻む者と立ちはだかる組織……。

次々と現れる黒い謎に、捜査は東京、神奈川、福島と広がりを見せ、ついにはフィリピンへ。奸計を絶対に許さない“最強のタスクフォース”が巨悪を追い詰める、大迫力の警察小説。(帯の紹介に加筆)

『小説推理』2010年3月号〜2011年4月号まで連載された作品を加筆・訂正し、2011年10月に刊行。



鷺沼&宮野のコンビが三度登場。未解決事件の継続操作が本業である特別捜査一係に所属し、どちらかといえば正義の熱い心を持っている鷺沼警部補と、ばくち好きで金儲けになることを探し回っているような宮野巡査部長という正反対な性格の二人が、時には互いの欠点を補い、時には自らの長所を生かす形で事件にぶつかっていく。前作でも活躍したやくざの福富、パソコンが得意な若手刑事の井上、上司の三好係長も活躍する。

今回は、ここ数年でS&W製のリボルバーやシグ・ザウエル製のオートマチックに切り替えられた、かつての警察の正式拳銃・ニューナンブにまつわる謎。市販も輸出もされていない回転式拳銃が、たとえ右翼の元大物とはいえ、民間人が入手することは不可能なはず。裏に何かあるはずと読んだ鷺沼たちが捜査を始めるが、公安警察の邪魔の手が入る。

毎度毎度大物を相手にしているとはいえ、さすがに公安警察全体が相手というのは少々デカすぎではないか。しかも、片方には対処があまりにも早く、片方にはもたもたしている姿が奇妙。そもそも鷺沼たちをかまわなければ、このような結末をむかえなかったと思うし、逆にさっさと鷺沼たちに手をかければ、簡単に自分たちの身を守ることができたと思うのだが……。まあ、そういう主人公補正を抜きにすれば、途中までは面白い。一つずつ闇の真相に近づいていく姿は、都合よすぎる部分があるとはいえ、警察小説の王道である。その闇が大きければ大きいほど、解決に至るカタルシスが得られるわけなのだが、残念ながら最後が駆け足。この作者の欠点だよな、これは。まあ、結末にはびっくりしたけれどさ。

それにしてもここまで書くのはやりすぎという気がしないでもないが、それ以上にシリーズの次の対象がどうなるのかが気がかり。実際だったら、段階を追ってそれぞれが飛ばされているような気がするんだけれどね。そういう点は気にしないようにしよう。