- 作者: 鮎川哲也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1984/12
- メディア: 文庫
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『小説宝石』1978年新年号〜五月号まで『蝋の鶯』のタイトルで連載。加筆改題の上、 1979年3月、カッパ・ノベルスより刊行。1984年12月、光文社文庫化。
鮎川哲也の読み残しの一冊。読み終わってみて、はっきり言ってつまらなかった。本当に当時、受け容れられたのだろうか。
トリックとしては、函館駅から荷物を発送したまま行方不明になったレコード店主の生首が、上野駅に到着した荷物の中から出てきた、というもの。ある程度は予想できるものであり、面白さに欠ける。小説としては、レコードや音楽に対する薀蓄こそちょっとだけ楽しめたもの(とはいえ、かなりくどい)の、事件の謎や犯人当てといった点では非常につまらない。
そもそも、警察の捜査に疑問が残る。なぜ動機をもつものを捜査しないのか。そもそも事件関係者をまず洗い出すだろう。あまりにもセオリー無視の捜査が、小説をつまらなくしている。容疑者のアリバイを探しあてるのが一介の探偵というのも、すっきりしない。警察はそこまでバカなのか。最後に鬼貫が出てきて、あっという間に事件を解いてしまう。だったら最初から出せよ、警部なんだから。
私が鮎川哲也を嫌うのは、こういった点。トリックさえよければ、後はどうでもいいと言ったところが嫌なのだ。つまらない作品である。トリックを知りたい人以外は、読まない方がいい。時間の無駄である。