- 作者: 光原百合
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/08
- メディア: 単行本
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2009年、書き下ろし。
作者が長年暖めており、毎年のように完成させたいと言っていた、ギリシア神話を題材とした長編ファンタジー。登場人物は当然ギリシア神話から採られているが、内容は作者が考え出した物語であり、実在するギリシア神話とはまったく関係がない。個人的には舞台にも人物にも内容にもオリジナルが感じられない、ギリシア神話の二次創作だな、というイメージである。プラトニックラブやヒロイックファンタジーが好きな女の子の描くファンタジー、とでも言えばよいだろうか。このヒーローと、このヒロインを結びつけたら素敵だな、というロマンティックな思考しか見えてこない。主人公にオデュッセウスと結ばれないナウシカアと、オデュッセウスの息子テレマコスを選ぶあたりがいかにもという気がする。
三つの試練の選ばれ方は内容の困難さが違いすぎて、なぜこれが同列になるのかさっぱりわからないし、神々は介入してはいけない決まりなのにとことん介入するなどルールの線引きの曖昧さが不明であることなど、どうも設定に甘さが見られるのは気になった。いっそのこと、テレマコスとナウシカアの話に絞った方がよかったんじゃないのかね。途中から登場するから、今一つ感情移入しにくいし。もっとも「全能の神々」がこんなルールで運命を決めさせること自体がおかしいと思うのだが、まあそれは気にしないこととしよう。
はっきり言ってしまうと、ギリシア神話をアレンジするなら、和田慎二『ピグマリオ』ぐらい徹底的にやってほしい。作品規模の割に、甘さしか感じなかった作品。