平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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中西達郎作/nini画『パラドクス・ブルー』第1巻(マッグガーデン ブレイドコミックス)

パラドクス・ブルー 1 (BLADE COMICS)

パラドクス・ブルー 1 (BLADE COMICS)

1993年10月2日、あるドイツの片田舎で人類史上初、後に“天使”と呼ばれることになる超常的存在が降臨した。天使は人間に試練(パラドクス)を課す。それはパズルであったり、暗号めいたものであったり色々であったが、いずれも一筋縄ではいかない難問ばかりであった。人間が試練を乗り越えると、天使は人間に奇跡の力による天恵(めぐみ)を与えた。しかし時間切れによって試練に失格すると天罰(ペナルティ)を与えられた。最初に天罰を与えられたのは1994年1月1日、あるイギリスの地方都市においてであった。その天罰は、1日で地方都市を消滅させた。生存者はわずか1名のみ。
以後、地球は天使との戦いに明け暮れることになった。
舞台は2008年。青葉市にある小中高一環のニューモデル国立校、A校。天使の試練に挑むのは、A校生徒会の5人。
自らの正体を謎としたStage.1「大海に呑まれるがごとく」。青葉祭で起きた謎の大量失踪事件。天使に閉じこめられた迷宮の大扉を開くキーワードを求めるStage.2「迷宮ゲーム」。天使によって引き起こされる連続殺人事件。被害者同士の関連性は不明。死因はバラバラ。目撃者はなし。Stage.3「青葉市連続怪死事件」の前半を収録。「月刊コミックブレイド」08年12月号〜09年3月号連載。
ミステリークイズ×学園ファンタジー」という帯の言葉に誘われて購入。出版社も雑誌も初めて聞いた名前だ。超生命体が人間に試練を課す、という形のクイズ。そのため、どんな非現実的設定でも謎の舞台を作り出すのは可能。もちろんその謎の回答は論理的なものでなければならないが。なぜかラスボス的存在の天使イザナミエルがナビゲータを務めており、解決編にいたる直前の分岐部分に登場する。またヒントとなりそうな部分では、物語の途中で天使の羽根を舞わせている。
一応分岐はあるが、解決編に行くか、自分で謎解きをするために冒頭に戻るか、BADENDに行くかだけなので、意味があるとは思えない。まあ、解決編に行くための儀式程度と思えばいいか。
謎解きパズルにファンタジー要素を加えたことにより、謎の幅を広げたのはうまいところか。逆にこのような設定は謎解きのための整合性を取ることが難しくなりがちだが、少なくとも第1巻を読んだ限りではなかなかの出来だと思える。ファンタジー要素はあるものの、謎そのものは割とシンプルなので、解く方も結構楽しい。設定そのものや登場人物も結構謎が秘められていそうなので、次巻が楽しみである。
巻末にはEXTRA Stageとして、アーサー・ワトソンとフローレンス・ホームズが天使の試練に立ち向かう暗号問題が載っている。これを解くと、物語の根幹に関わる隠し設定がひとつ明らかになるとのこと。暗号は嫌いなので、自分で解く気にはならない。誰か解いていたら、見せてもらおう。この二人は本編といずれ絡むのだろうか。
またカバーを取ると用語辞典がびっしりと書かれている。お疲れさまです。こういうのは大好きです。