平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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レジナルド・ヒル『骨と沈黙』(ハヤカワ・ポケットミステリ)

骨と沈黙 (ハヤカワ ポケット ミステリ―ダルジール警視シリーズ)

骨と沈黙 (ハヤカワ ポケット ミステリ―ダルジール警視シリーズ)

酔って帰宅したダルジール警視は、裏手の家の寝室で展開される光景に思わず目をこらした。灯がともり、カーテンがひらかれたかと思うと、裸身の女性があらわれたのである。だが、つぎの瞬間、女性のわきには銃を手にした男が立ち、夜のしじまに銃声が轟いた!

女の死体をまえにたたずむ男は、現場に駆けつけたダルジール警視にむかって、妻の自殺を止めようとして銃が暴発したのだと主張した。しかし、目撃者のダルジール警視は、こいつは殺人だと自信満々だった。はたしてどちらの主張が正しいのか? 一方パスコー主任警部は、つぎつぎと警察に送られてくる自殺をほのめかす手紙の差出人をつきとめるよう、ダルジール警部に命じられていた。内容からして、謎の差出人は今度の事件に関わりのある女性と推察されたが……。

人間の生と死に秘められた苦痛と謎を鮮烈に描いた本格傑作。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞作。(粗筋紹介より引用)

ダルジール警視シリーズ第11作目。1990年発表。1992年5月邦訳発売。



レジナルド・ヒルを読むのは多分『子供の悪戯』以来。近代の英国ミステリらしい重厚さが、どうも今一つ受け付けないのだが、それは本書でも一緒だった。そもそもダルジール警視という人物が受け付けない。これがドーヴァーぐらいまでかっとんでくれると、ユーモアとして楽しめるのだが。

本書はダルジール警視が目撃した事件の捜査、事件の被害者である女性から出てきた麻薬をめぐる捜査、警察に次々と届けられる自殺をほのめかす「黒婦人」からの手紙、、フーリガンの取り締まり、そしてダルジールが神を演じるという中世の聖史劇をめぐる劇団の話が絡み合い、物語が進んでいく。一つ一つ丁寧に人物と背景が語られるものだから、長い、長い。いや、読んでいて退屈するわけではないんですがね。なんか英国ミステリって、どんどん普通小説に近づいているんじゃないかという気がしなくもない。

色々と深くて重いストーリーであることは間違いないのだが、読み終わってみるとなんだかもやもや感が残るというか。これでいいの、という気もした。それと、聖史劇のくだり、もっと減らせられるだろう。あのあたりは読むのが本当に苦痛だった。

英国ミステリって、英国の素養がないと楽しめない部分が多い。本書で言うと、やはり聖史劇の部分。全然興味がない分野で、作者としては読者がわかっているという前提で話を進めるのだから、困ってしまう。傑作という評判は聞いていたが、面白かったかと聞かれたら微妙。