平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ヒラリー・ウォー『冷えきった週末』(創元推理文庫)

冷えきった週末 (創元推理文庫)

冷えきった週末 (創元推理文庫)

2月29日、深夜。彼女はパーティの席を立ち、そのまま姿を消した。そして翌朝、彼女は川べりで見つかった……殴殺され、雪に半ば埋もれて。同時に、プレイボーイの富豪が新妻を残して失踪。ふたりを結ぶものは何か? ニューヨークから来た名士たちの華やかな宴席の蔭でもつれあう、愛憎、打算、そして策謀。それを解きほぐさんと、ストックフォード署の警察官たちの捜査はつづく。パズルの一片一片のように小さな手懸かりをもとめて……。フェローズ署長の捜査メモを掲載、105項目にわたるデータと29の疑問点を提出。綿密な伏線と徹底したフェアプレイで読者に挑戦する、警察小説の巨匠ウォー屈指の本格ミステリ、本邦初訳!(粗筋紹介より引用)

1965年の作品、翻訳は2000年。



瀬戸川猛資に影響された人が東京創元社に入社したのかと思わせるぐらい、一時期多くの作品が翻訳されていたウォー。これも新刊で買ったのだが、読むのは今頃である。

ひとことで言ってしまうと、ウォーらしい警察小説、で終わってしまう。もちろん、レベルは高いのだが。殺人事件が起きて、さらにひとりが失踪。事件関係者となってしまったパーティーの出席者たちの、様々な思惑や右往左往振りを楽しみ、捜査の進展が全く見られず後手ばかりを引いてしまうフェローズ署長以下の警察側の動きの悪さに苛立ちながら、読者は誰が犯人なのだろうかとジリジリさせられながらページをめくることになる。

本格ミステリとして楽しめる警察小説を読みたい、いう人には満足できる仕上がりになっていると思う。

ただウォーを始めて読む人なら、『失踪当時の服装は』とか『事件当夜は雨』を先に読んだ方がいい。登場人物が多いので事件の背後関係を把握するのが少々手間であり、また警察の捜査が遅すぎるので、読んでいてちょっとまどろっこしいと感じる人がいると思う。