- 作者: アーナルデュル・インドリダソン,柳沢由実子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/06/09
- メディア: ハードカバー
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だが、現場に残された三つの単語からなるメッセージが事件の様相を変えた。
計画的な殺人なのか?
しだいに明らかになる被害者の老人の隠された過去。
レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルがたどり着いた衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相とは。
世界40ヵ国で紹介され、シリーズ全体で700万部突破。
ガラスの鍵賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー賞を受賞した、いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人、ついに日本上陸。(粗筋紹介より引用)
2000年、刊行。2002年、国際推理作家協会の北欧支部であるスカンジナヴィア推理作家協会のガラスの鍵賞受賞。2012年6月、邦訳、単行本刊行。
アイスランド警察の犯罪捜査官エーレンデュル・スヴェインソンを主役にしたシリーズの三作目。邦訳はこれが初めて。評判を聞いて読んでみたら、結構面白かった。
主人公のエーレンデュルは50歳。20年前に離婚。二人の子供は最低。本作で出てくる娘のエヴァ=リンドは麻薬中毒患者で妊娠中である。孤独な老人の殺人の真相をエーレンデュルが追ううちに、老人の暗い過去が明らかになっていくのだが、エーレンデュルのの執拗、というか偏執的なぐらいの捜査が日本じゃ無理だろうなあ、などと思いつつ、徐々に明らかになっていく過程は読んでいて楽しい。今時の小説のような無駄に長い描写がなく、物語がテンポよく進んでいくので、非常に読みやすい。隠された真相はとても哀しいものであり、思わず犯人に同情してしまう。そのテンポの良さが逆に物足りない、という人もいるかもしれない。
アイスランドという国の日常は全く知らないので、読んでいて新鮮だった。「イアン・ランキンは、どこかの国を知りたかったら、ミステリ小説を読めばいい、一番的確な案内書だと言っていますが、私も同感です」と作者が言うように、優れた警察小説はその国や街が持つ表と裏の部分を浮かび上がらせてくれる。それを実践した一冊と言えよう。シリーズの次の作品も読んでみようと思う。