平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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青井夏海『赤ちゃんをさがせ』(創元推理文庫)

赤ちゃんをさがせ (創元推理文庫)

赤ちゃんをさがせ (創元推理文庫)



三人の妊婦が妻として登場した家で始まった本妻捜し。女子高生の出産騒動。次々キャンセルされる依頼の謎。自宅出産専門の出張助産婦コンビが向かう先は、何故かおかしな謎を抱えた家庭ばかり。それらの謎を鮮やかに解き明かすのは、「伝説のカリスマ助産婦」明楽先生! 見習い助産婦・陽奈の成長と安楽椅子探偵の冴え渡る推理を描く、爽やかなユーモアに満ちたシリーズ第一弾。(粗筋紹介より引用)

「お母さんをさがせ」「お父さんをさがせ」「赤ちゃんをさがせ」を収録。2001年10月に<クイーンの13>として登場した単行本の文庫化。



自費出版『スタジアム 虹の事件簿』で一部のファンから注目を浴びた作者の第二作品集。助産婦の安楽椅子探偵というのは、なかなか面白い設定を見つけてきたなとは思う。収録されている3作品も、ユーモアにあふれた暖かい作品に仕上がっているので、読後感は非常によい。ただ、ミステリとしてみるとどうだろうか。「日常の謎」系の作品だが、謎はともかく解決にいたるまでの過程はかなり弱い。2,3の矛盾から、こういう解決があるよと、探偵役の明楽先生が謎を解き明かすのだが、100%完全無欠の解答ではないよね。こういう解釈があるよ、程度みたいなところで終わっている推理。まあ、「日常の謎」系作品には、この手のものが多いので、今更という批判かもしれないが。

読んでみて、面白かったな、と言える程度で終わっている。探偵役は珍しいけれど、事件や謎そのものの印象はほとんど残っていない。もっと強烈な謎があれば、違った評価にはなったと思う。