- 作者: ジェイムズ・ヤッフェ,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/07/31
- メディア: 新書
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今日デイビッドが持ちこんできたのは、ヴィルマというコーラスガールが殺された事件だった。ホテルのクラークとエレベーターガールの証言によれば、最後に彼女が生きているのを見た後、三人の男がヴィルマの部屋を訪れている。彼女を送ってきた中年の銀行家、浴槽の修理にきたホテルの雑役夫、死体を発見した町でも名うてのプレイボーイ。三人ともチャンスはあった。だが、そのなかの一人を名指す決め手がまったくなかった。
辛辣な皮肉をまじえながら、息子の話に耳を傾けていたママはやがて口を開いた。そして、その口からは思いもかけない言葉が飛び出した!
プリンス・ザレスキー、隅の老人、ウェルト教授と続く〈安楽椅子探偵〉の系譜の中でも燦然と輝く〈ブロンクスのママ〉登場。表題作ほか七篇の傑作短篇収録。(粗筋紹介より引用)
『エラリー・クイーンズ・ミステリマガジン』(EQMM)に1952年から1968年にかけて発表された短編8編を日本で独自にまとめ、1977年7月刊行。
「ママは何でも知っている」「ママは賭ける」「ママの春」「ママが泣いた」「ママは祈る」「ママ、マリアを唄う」「ママと呪いのミンクコート」「ママは憶えている」を収録。
安楽椅子探偵もののなかでも燦然と輝く「ブロンクスのママ」シリーズを集めた短編集。今頃読むのか、と言われそうだが。創元系は抑えていたのだが、ポケミスはなかなか手に取れなかったものなあ。夕食を食べて、刑事のデイビッドが手掛けている事件について話し、ママが三つの質問をして事件の謎を解き明かす。ママに対抗心を抱く妻・シャーリイの負けず嫌いな会話は楽しめるが、結局ワンパターンと言ってしまえばそれまで。いや、読んでいる分には楽しいのだが、読み終わってしまうとそれほど残る物は無いかな、と。安楽椅子探偵ものの利点と欠点が同居している格好の例だと思う。
推理自体は楽しいのだが、読み続けるとどうしても飽きが来てしまう。短編集1冊で終わらせたのはよかったことだと思う……としたら長編が4冊も出たことにはびっくり。