平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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荻原浩『サニーサイドエッグ』(創元推理文庫)

サニーサイドエッグ (創元推理文庫)

サニーサイドエッグ (創元推理文庫)

私は最上俊平、私立探偵である。ハードボイルド小説を愛する、根っからの私立探偵である。ペット専門の探偵ではないのだ、決して。ある日、若く着物姿も麗しい女性が事務所を訪れた。ペット捜しなら、もう――「うちの猫を捜してほしいんです」はい喜んで。1か月ぶりの仕事ではないか。そうこうするうち、「ブロンドで青い目の若い」秘書まで雇えることに。私が独自に習得した、猫捜しの極意「サニーサイドを捜せ」を伝授し、愛しの依頼主のための捜査は順調に進む……。名作『ハードボイルド・エッグ』の続編、いよいよ文庫化。(粗筋紹介より引用)

2007年、書き下ろし。2010年文庫化。



最上俊平がまさかの復活。『ハードボイルド・エッグ』の好きな編集者が作者を口説き落として、続編を書かせたんだろうなあ、と思わせる作品。それでも力は入っているなあ。若い女性とヤクザからの猫捜しの依頼が、どちらもロシアンブルー。雇った16才のバイリンガルにはちょっと訳ありの模様。ただのペット捜し探偵のはずが、いつしか事件に巻き込まれるという展開は前作と変わらないが、ミステリ専門出版社へ書き下ろしたこともあってか、最上を取り巻く人間模様はより複雑になっており、ミステリファンの鑑賞に十分応えた仕上がりとなっている。もちろん、ユーモア有り、涙も有り。名作の続編にはがっかりさせられるものも多いが、本作品についてはファンの期待に十分応えた作品である。

それにしても、こんな終わり方をされると、新作を期待してしまうよね、絶対。