- 作者: 夏樹静子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1996/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
1992年、角川書店より出版された作品の文庫化。
アルツハイマー病といえばロス・マクドナルドかレーガン元大統領の名前が浮かぶ程度で、あとはせいぜいゆっくり惚けていくというイメージしかなかった。本書を読み、アルツハイマー病の恐ろしさについて、考えさせられる。主人公が生と死の間で揺れ動く様や、徐々に病魔が進行していることに気付く恐怖などの描写はさすが。若い女性とのロマンスも、男としてはわかります。妻や子供の方から見たら勝手な行動なんだが。
女性の家族にまつわる疑惑部分あたりにミステリっぽい仕掛けがほんのちょっと用意されているが、そこを除けば作者のきめ細やかな描写が際だつ普通小説。アルツハイマー病という病気そのものではなく、病気にまつわる行動原理をわかりやすく知るには、ちょうどいい本ではないかと思う。わかりやすい描写が、病気を知る人から見たらかえって軽いイメージを持ってしまうのではないかと危惧してしまうが。