平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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伊坂幸太郎『グラスホッパー』(角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説! (粗筋紹介より引用)

2004年7月、角川書店より単行本刊行。加筆修正のうえ、2007年6月、文庫化。



鈴木、鯨、蝉の3人の視点が切り替わり、物語は進行していく。キーワードとなる人物は、線路や交差点に突き飛ばして相手を殺す「押し屋」。それにしても視点の切り替わりが早すぎて、物語に没頭できない。文章も癖がありすぎて、読むのに一苦労。確かに分類不能なのかもしれないが、小説よりも映像向きの作品といえそう。物語のスピード感に対して描写が不足しており、読者の理解を置いてけぼりにしている。登場人物のだれにも感情移入できないし、不幸感満載なはずなのに、なぜか喜劇っぽい動きに違和感がある。

結末に向けての強引さにもついていけないし、何とも退屈な一作だった。