平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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遠藤徹『姉飼』(角川ホラー文庫)

姉飼 (角川ホラー文庫)

姉飼 (角川ホラー文庫)

さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は──。

蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜。小学生の僕は縁日で、からだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫ぶ「姉」を見る。どうにかして、「姉」を手に入れたい……。僕は激しい執着にとりつかれてゆく。「選考委員への挑戦か!?」と、選考会で物議を醸した日本ホラー小説大賞受賞作「姉飼」をはじめ4編を収録した、カルトホラーの怪作短篇集!(粗筋紹介より引用)

裕也に話しかけている女の子・亜矢乃の正体はキューブ・ガールズ。アダルトショップに売られている真四角のピンクの箱で、パソコンから自分好みの設定の情報をダウンロードすると、女の子になる。「キューブ・ガールズ」。

公園のジャングル・ジムは、やってくる人たちに声を掛け、優しく包んでくれる。そのうち、夕方にやってくる女性に恋をしてしまった。「ジャングル・ジム」。

瀬戸内の孤島にある果樹園を経営している吾郎は、自らの巨体の贅肉にオニモンスズメバチの卵を産み付けさせ、孵った幼虫に食わせる激痛に快感を得ていた。そんな彼が愛人に産ませた四人の子供も父親のように成長したが、虫が大量に増えた年、4人が次々に無残な肢体で発見される。「妹の島」。

2003年、「姉飼」で第10回日本ホラー小説大賞受賞。2003年11月、4編を収録して角川書店より単行本化。2006年11月、文庫化。



選考会で物議をかもしたという「姉飼」だが、読んでみるとここまで異様な作品も珍しい。蚊吸豚とか脂祭りなどという設定も異様だが、なんといってもおぞましいのは「姉」の設定。祭りの出店で、串刺しにされてぎゃあぎゃあ泣き喚いている売り物というのだから、いったいどんな設定なのかと聞きたくなる。私自身は見たくもないのだが、中毒性があるのもわからないではない。選評で高橋克彦が別次元から送られてきた作品といったのも納得できる。これは短編だから許された話だろうなあ。映像でも漫画でも見たくないよ、これは。文章から想像される姿を楽しむのが、この作品なんだろうと思う。

「キューブ・ガールズ」と「ジャングル・ジム」はチープなアイディアのみの作品。とくに「キューブ・ガールズ」なんか、エロネタとして色々なところにありそうだ。

「妹の島」は逆にもっと描写を濃くすることで、中編ぐらいに膨らますことができそう。色々ともったいない作品。



 粗筋紹介にもあるけれど、こういうのをカルトホラーっていうのかな。よくわからないけれど、確かにごく一部の熱狂的なファンを獲得しそうな作品ではあった。解説の大槻ケンジみたいに。