平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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クリス・ウィタカー『終わりなき夜に少女は』(早川書房)

 アメリカ、アラバマ州の小さな町グレイス。嵐が近づきつつあるこの町でかつて起こった連続少女誘拐事件は、未だ真犯人が捕まらず、捜査は暗礁に乗り上げていた。そして1995年5月26日の夜、また一人の少女が失踪した。彼女の名前はサマー・ライアン。町の誰からも愛される彼女が、“ごめんなさい”と一言だけ書いた紙を残していなくなってしまったのだ。警察は単なる家出だと判断したが、サマーの双子の妹レインはそうは思わなかった。レインはサマーとは対照的な不良少女だが、誰よりもサマーのことを愛していた。サマーがレインを置いていなくなるはずがない。レインは捜査を始めるが、その中で彼女は、自分の知らない姉の姿を知ることになる――。(粗筋紹介より引用)
 2017年、イギリスで発表。2024年5月、早川書房より邦訳単行本刊行。

 『われら闇より天を見る』で話題になった作者の第二長編。『われら闇より天を見る』の3年前に出版されている。
 1995年のアラバマ州にある架空の田舎町、ブライマー郡グレイスが舞台。失踪した15歳の少女サマーの双子の妹レインが、警察署の見習で高校生のノア・ワイルドとその親友パーヴィス(パーヴ)・ボウドインとともに探すのが主要なストーリー。そこにグレイス警察署署長のブラックの視点による警察捜査と、サマー自身の視点による過去の物語が加わっていく。
 人物描写やドラマ作りはうまい。特にレインとノア、パーヴのやり取りは、この年代ならではのまぶしさがある。また、覇気のないブラックの存在も、物語に深みを与えている。ただ、ミステリとしてみると、無理が目立つ。『われら闇より天を見る』と比べると、そこが弱いのが残念。
 青春小説としては読みごたえがある作品。『われら闇より天を見る』と比べるとまだ未完成なところがあるのは、仕方がない。新作が、読んでみたい。