平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

呉勝浩『法廷占拠 爆弾2』(講談社)

 法廷に囚われた100人を、ひとり残らず救い出せ!
 未曾有の連続爆破事件から一年。スズキタゴサクの裁判の最中、遺族席から拳銃を持った青年が立ち上がり法廷を制圧した。「みなさんには、これからしばらくぼくのゲームに付き合ってもらいます」。生配信で全国民が見守るなか、警察は法廷に囚われた100人を救い出せるのか。籠城犯vs.警察vs.スズキタゴサクが、三つ巴の騙し合い!(粗筋紹介より引用)
 『小説現代』2024年8・9月合併号掲載。2024年7月、単行本刊行。

 あの『爆弾』の続編が出るとは思わなかったが、確かに法廷でのスズキタゴサクは見てみたい。そこでまさかの法廷占拠、生配信。警視庁捜査一課特殊犯捜査係の類家、野方署の倖田沙良巡査と伊勢勇気巡査も再登場。籠城犯と警察の手に汗握る対決に、スズキタゴサクがいつもの調子で茶々を入れる。
 ジェットコースターのようなストーリー展開ではあるが、前作の緻密な計算ぶりと比べると、一直線急降下という感じ。前作は犯人(=作者)の掌の上で転がされていたのだが、本作は自転車で下り坂をふらつきながら降りている危うさがある。劇場型犯罪ではあるが、定型的な台詞回しと行動が興醒め。確かにどんでん返しが待っているのだが、それすらもすでに種明かしされたマジックを見ているよう。それもこれも、何もかも悟ったようなスズキタゴサクの言動に問題があると思うのだが、どうだろうか。
 確かに一気に読ませる面白さはある。だが、もっとすごくできたんじゃないか、というもどかしさはある。ここは第三弾で巻き返しを期待するしかない。