平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジェフリー・ディーヴァー『スティール・キス』上下(文春文庫)

 NYのショッピングセンターでエスカレーターが誤作動を起こし、通行人の男性を巻き込んだ! 刑事アメリアは必死に救助するが男は痛ましい死を遂げ、あげくに捜査中の犯人を取り逃がしてしまう。リンカーン・ライムに助けを借りたいが、彼は市警を辞めてしまっていた。一方のライムは、民事訴訟でこの事故を調査し始める―――。(上巻粗筋紹介より引用)
 エスカレーターの不具合は故意に仕掛けられたものと判明、事故は機械を凶器に変えた殺人だった。連続殺人犯の動機は謎に包まれたまま、見習い捜査官をチームに加えライムは真相を追求する。アメリアを狙う狂気の目…真犯人は一体誰なのか?日常に潜む危険をあぶり出すリンカーン・ライム・シリーズ第12弾!(下巻粗筋紹介より引用)
 2016年、刊行。2017年10月、文藝春秋より邦訳単行本刊行。2020年11月、文庫化。

 リンカーン・ライムシリーズ第12弾。なぜかライムは市警を辞めているし、アメリアとの関係もちょっと隙間風が吹いている。ライムのラボでインターンとして働くジュリエット・アーチャーという元疫学研究者は登場するし、アメリアの元恋人である元刑事のニック・カレッリが登場する。
 いつの間にか舞台はデジタル社会になっており、作者も最新のものに敏感なのだなとは思ってしまう。上に書いたように気になる人物も登場してくる。とはいえ、今さらアメリアの前の恋人が出てきてもなあ、という思いは強い。何とか新味を出そうと、作者も必死なのだろうか。
 とまあ、そんなことを思ってしまうぐらい、物語の展開に既視感が強いことも確か。読んでいて退屈はしないが、過去の作品と比べると面白さは落ちる。惰性で読み終わってしまった。