平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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雫井脩介『検察側の罪人』上下(文春文庫)

 蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う雫井ミステリー最高傑作!(上巻粗筋紹介より引用)
 23年前の時効事件の犯行は自供したものの、老夫婦刺殺事件については頑として認めない松倉。検察側の判断が逮捕見送りに決しようとする寸前、新たな証拠が発見され松倉は逮捕された。しかし、どうしても松倉の犯行と確信できない沖野は、最上と袂を分かつ決意をする。慟哭のラストが胸を締め付ける感動の巨篇!(下巻粗筋紹介より引用)
 『別册文藝春秋』2012年9月号~2013年9月号連載。2013年9月、単行本刊行。2017年2月、文庫化。

 

 老夫婦強盗殺人事件の容疑者の中に、すでに時効となった中学生強姦殺人事件の容疑者・松倉重生がおり、大学時代にその中学生の家族がやっている寮に住んでいた最上毅検事はなんとしても起訴しようとする。一方、教え子でもある若手検事の沖野啓一郎は、最上のやり方に疑問を抱く。
 まあ、検察側の罪人という表題タイトルにもある通りの事件が起きるのだが、あまりにもずさんすぎて、とても敏腕検事のやることとは思えない。逆に言えば、それだけ切羽詰まっていたといえるのだろうか。動機にしてもかなり不自然。いくら引き金となった事件が起きたからといって、ここまでやるか、というのが正直な印象。沖野と立会事務官の橘沙穂が恋仲になる展開も、どうも薄っぺらく感じてしまった。
 言い方が悪いのだが、作りすぎている割に内容が不自然で、展開は単純。ドラマになりそうなストーリーと人物を配置しているようにしか思えない。松倉とか、弁護士の白川雄馬の描き方もステレオタイプなものになっているのが残念。
 それでも、次のページを読ませようとする力だけはすごかった。さすが、ベストセラー作家。