平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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島田荘司『アルカトラズ幻想』上下(文春文庫)

 1939年、ワシントンDC近郊で娼婦の死体が発見された。時をおかず第二の事件も発生。凄惨な猟奇殺人に世間が沸く中、恐竜の謎について独自の解釈を示した「重力論文」が発見される。思いがけない点と点が結ばれたときに浮かびあがる動機――先端科学の知見と奔放な想像力で、現代ミステリーの最前線を走る著者渾身の一作!(上巻粗筋紹介より引用)
 猟奇殺人の犯人が捕まった。陪審員の理解は得られず、男は凶悪犯の巣窟・孤島の牢獄アルカトラズへと送られる。折しも第二次世界大戦の暗雲が垂れ込め始めたその時期、囚人たちの焦燥は募り、やがて脱獄劇に巻き込まれた男は信じられない世界に迷い込む。島田荘司にしか紡げない、天衣無縫のタペストリー。(下巻粗筋紹介より引用)
 『オール讀物』連載。2012年9月、文藝春秋より単行本刊行。2015年3月、文庫化。

 

 全部で四章に分かれている。第一章は、2件の凄惨な猟奇事件。第二章はその犯人が書いた、恐竜の進化の謎に迫る重力論文。第三章は誰も成功したことのないアルカトラズからの脱獄。第四章はアルカトラズの地下世界にある謎のパンプキン王国。これだけ見ると、脈絡が全くない。どうつながるか想像もつかないだろうが、すべて一人の主人公が関わっている。そしてエピローグで、すべての章が繋がることとなる。
 島田荘司らしい奇想というか、力業というか。良くも悪くも、ここまで強引な話をまとめることができるのは、島田だけだろう。特に第二章の「重力論文」には色々な意味でよく考えるよといったものなのだが、これも島田荘司のオリジナルとのこと。
 それぞれの章は面白いと言えば面白いのだが、無理しているなという印象も強い。言っちゃえばトンデモの一歩手前、いやすでに踏み出しているか。読んでいる途中は面白いけれど、読み終わったら呆気に取られてしまう。作者にお疲れさまとは言いたい。