「なんでここにいるの?もしかして動いた?死んでるのに?」
どこまでもロジカル、限りなくポップ。そしてほんのりクレイジー。本格ミステリ大賞受賞作家の奇想が踊る、5つの奇妙な謎と解決。
ドレスをズタズタにした犯人は、どこから来てどこへ逃げた?「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」
虫食いだらけの原稿を、前後の文章から推理して完全修復!?「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」
夫は殺したはずなのに! なぜここに!?「動くはずのない死体」
超常的な力で殺人罪から逃れる男 VS 熱血刑事「悪運が来たりて笛を吹く」
瞬間移動能力者が起こした密室殺人。読者への挑戦状付き!「ロックトルーム・ブギーマン」(帯より引用)
『ジャーロ』2021~2022年掲載に書下ろし1本収録。2023年5月、刊行。
ノンシリーズの短編集。内容的にはバラバラで、しかしどことなく不自然さが統一されているというか。いずれの作品もブラックユーモアな雰囲気が漂っていて、深刻さが感じられない。
表題作「動くはずのない死体」は、読む人が読めば凄い不可能犯罪のように見えるのだが、オチまで行ってしまうとなんだこのバカバカしさ、と言いたくなるような作品。楽しめる人には楽しめるのかもしれないが、個人的にはとんでもない肩透かし作品である。
「フーダニット・リセプション 名探偵粍島桁郎、虫に食われる」にしても、コーヒーをこぼして読めなくなった兄の原稿の虫食い部分を、前後の文章から推理して埋めていくというパズルみたいな作品で、個人的にはお疲れさまとしか言い様がない内容である。
「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」はまあ読めたかな、という心理サスペンス。
「悪運が来たりて笛を吹く」は落語のオチみたいな作品。
「ロックトルーム・ブギーマン」は書下ろしでかなり力が入っているが、その分肩に力が入りすぎて、逆に読みにくい。
どの作品もロジカルな部分があるのだが、その部分が逆に読む気力を無くさせる。もうちょっとさりげなく入れてほしいんだな、私は。多分体調の悪いときに読むと、つまらないです。頭をスッキリさせてから、読むべき本。