平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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阿部和重、伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)

 人生に大逆転はあるのか? 小学生のとき、同じ野球チームだった二人の男。二十代後半で再会し、一攫千金のチャンスにめぐり合った彼らは、それぞれの人生を賭けて、世界を揺るがす危険な謎に迫っていく。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29と、公開中止になった幻の映画。そして、迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、動き始めたものとは―― 現代を代表する人気作家ふたりが、自らの持てる着想、技術をすべて詰め込んだエンターテイメント大作。(粗筋紹介より引用)
 2014年11月、文藝春秋より書下ろし刊行。

 相葉時之は、借金を返すために一攫千金を狙うも手元に残ったのは怪しいスマートフォンだけで、しかもテロリストから命を狙われる羽目に。間一髪のところで偶然出会ったのは、小学校時代のの野球チームの仲間だった井ノ原悠。こちらは息子の皮膚のアレルギーを直すために妻が怪しげな民間療法にはまったため、借金を抱えていた。そして井ノ原の依頼人であった厚生省の桃沢瞳も交わり、波乱万丈の逃亡劇が始まる。蔵王御釜が発生源の「村上病」。第二次大戦中に蔵王に墜落したB29。主役のレッドが幼女に手を出したために公開直前で中止になった特撮映画『鳴神戦隊サンダーボルト』。これらがどう結びつくのか。
 阿部和重は初めて名前を聞いたが、芥川賞他を受賞している人気作家だとは知らなかった。うーむ、無知って恐ろしい。
 素人連中が警察やテロリストから逃げ回り、それでも証言や証拠が集まってきて、気が付いたら真相に迫っているというアクション満載の娯楽小説。ツッコミどころ満載ではあるが、とにかく楽しめればいいので問題なし。最初から張っていた伏線が、最後になって綺麗に回収されるのはさすがとしか言いようがない。あれこれ言わず、とにかく読め、という作品。
 キャプテンサンダーボルトは、本名フレデリックワーズワース・ウォードというオーストラリアのブッシュレンジャー。1953年にはオーストラリアで映画化されている。