平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ジェフリー・ディーヴァー『エンプティー・チェア』上下(文春文庫)

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)

エンプティー・チェア〈下〉 (文春文庫)

エンプティー・チェア〈下〉 (文春文庫)

脊椎手術のためにノースカロライナ州を訪れていたライムとサックスは、地元の警察から捜査協力を要請される。男一人を殺害し二人の女性を誘拐して逃走した少年の行方を探すために、発見された証拠物件から手掛かりを見つけるのだ。土地勘もなく分析機材も人材も不十分な環境に苦労しながらも、なんとか少年を発見するが……。(上巻粗筋紹介より引用)

町の問題児だった“昆虫少年”を無事逮捕したが、尋問するうちに少年の無罪を信じたサックスは、少年とともに逃走する。少年が真犯人だと確信するライムは、サックスを説得するが、彼女は聞こうとしないばかりか、逃走途中で地元の警察官を射殺してしまう。少年が嘘をついていたことも判り、状況は絶体絶命のデッドエンド!(下巻粗筋紹介より引用)

2000年発表。ライムシリーズ第3作。2001年10月、文藝春秋より翻訳単行本刊行。2006年11月、文庫化。



シリーズ第3作は、手術のために訪れたノースカロライナ州パケノーク郡の田舎町、タナーズコーナーでの謎解き。アウェイの状況で依頼された昆虫少年・ギャレット・ハンロンを捕まえるライムとサックスだったが、話しているうちにギャレットの無実を信じたサックスが逃走という展開。今回は手術までのタイムリミットが間近に迫っているという状況も加わり、なかなかスリリングな展開となっている。

今回は昆虫少年、ギャレットの存在感が際立っている。何もかも昆虫の世界と結びつけるその思考が、非常に素晴らしい。言われてみるとなるほどと思わせることが多く、サックスが騙されたとしても不思議ではない(笑)。事件の謎の構図がやや単純なため、彼に本編は救われていると言っても過言ではない。

例によって都合がいいなと思わせるものはあるものの、最後のどんでん返しの連続は非常に楽しめた。追うものと追われるものがすぐに逆転する展開は、非常にスリリング。やはりディーヴァ―は面白い、という結論に達してしまう。ワンパターンにならない工夫もしているし。

ディーヴァ―は買うだけ買って手元に置いたままなので、引き続き読んでみよう。問題は探し当てるのが一苦労ということなのだが。