覆面作家・
KADOKAWAより2019年9月、単行本刊行。加筆修正のうえ、2022年1月、文庫化。
世界中から貧しい女を日本へ連れ帰って囲っていた、ろくでなしの文化人類学者錫木帖が遺した推理小説の原稿を自分の名前で出版してベストセラーとなった
それから10年後。覆面作家天城菖蒲に5人の推理作家が招待された。
グロいグロいと聞いていたので手を出さなかった作家であったが、『名探偵のいけにえ』『名探偵のはらわた』が面白かったので、食わず嫌いは止めて手を出してみたのだが……グロい。不気味じゃなくてグロい。気持ち悪いわ、本当に。
序盤の気持ち悪すぎる設定と展開。そして覆面作家に招待された推理作家たちの異様なこと。さらに無人島の館での連続殺人。本格ミステリファンなら興味を持ちそうな設定だけど、とにかく気持ち悪くかったので、早く読み終えようと思ってページを進めてしまう。そうしたら連続殺人事件の後は、怒涛の推理合戦。本来だったらワクワクするところなんだが、登場人物も設定も描写も事件の状況もとにかくグロテスクなので、真剣に読もうという気が失せてくる。ある意味凄い推理合戦なのだが。まあ、ここまで異様な設定だからできた、とんでもない推理合戦ではあった。好きな人なら一読の価値はあるのだろうな。
ただ、力で強引にひねくり回す推理なので、振り返ってみると投げっ放しになっている謎がいっぱいあるような気がする。特に最後。こいつらどうなるんだろう。ただ、振り返る気にならない。思い出したくない描写が多すぎる。そしてその後も考えたくない。
謎解きの強引さはすごい。グロ表現が気にならない本格ミステリファンなら、楽しめる。それでも、食後すぐには読まない方がいいだろう。