平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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佐々木淳子『SHORT TWIST 佐々木淳子傑作選』(幻冬舎コミックス)

 子供の頃から、時々記憶が飛んでしまうことのある高校生の操。どうやら、記憶のない間も時間は流れ、知らない自分が行動しているらしい。ある日、操の前に現れたのは謎の男・レニィと、天才物理学者の少年・拓美。ふたりとも操と同じく記憶が飛んでしまうことがあるようだが、その原因は「時の捩れ(トゥイスト)」で――!? 「伝説の地」「ベビーNの幸福」「オパールの竜」ほか、商業誌未発表作品&描きおろしも収録した、珠玉の作品集。(粗筋紹介より引用)
 2011年3月、発売。

 佐々木淳子は好きな漫画家の一人。『ブレーメン5』『那由他』も面白かったが、やはり最高傑作は『ダークグリーン』。『ドリームダスト・メモリー』に収録されていた短編も面白かったな。ただ『ASUKA』に移った『青い竜の谷』はまだ読めたが、『アイン・ラーガ』になると難しい理屈をこねくり回す率が高くなってきて、漫画としての面白さがどんどん失われていった気がする。『ダークグリーン』の続編となった『リュオン』『ディープグリーン』となると、個人的には蛇足感が強かった。
 「SHORT TWIST」は1988年6、7月号に『プチフラワー』に掲載された中編。『ダークグリーン』の連載終了後に描かれた作品である。3人の意識だけが時を行ったり来たりする現象の謎とその結末が描かれたSF作品。この人にしては珍しくアクション多め。展開は早くてスリリングだし、謎と解決も含めてすっきりとまとまっているし、結末が何とも言えない味を醸し出していて、好きな作品。SFマンガの傑作だと思うんだけどね。
 当然プチフラワーコミックス版は買っていたのだが、幻冬舎で再録されていたとは知らなかった。そうそう、これを読むために『プチフラワー』を読んだら、『辺境警備』がとても面白かったので、それから買い続けたというのが懐かしい。あれから紫堂恭子はずっと買っているし。
 短編「のこされたこころ ケースB」は単行本初収録。『Who!』に収録されている初期短編「のこされたこころ」の関連作品なんだろうけれど、肝心の「のこされたこころ」を全然覚えていないので、よくわからない。
 短編「伝説の地」は『ドリームダスト・メモリー』からの再録。コメディSF。
 中編「ベビーNの幸福」は、男性同士のカップルの精子を組み合わせてできた子供と、その代理母の話を描いたSF。これで代理母の問題をちょっと考えちゃいましたね。当時『プチフラワー』に掲載されたものは読んでいるし、『ブルーオベリスク』にも収録されている。
 短編「オパールの竜」は有りがちなSFかな。最後の一コマのような作品は横山光輝などにもあるし。これも『ブルーオベリスク』に収録されていたかな。思い出せない。
 描きおろし「LONG TWIST」は「SHORT TWIST」のその後を描いた掌編。まあ、これが読みたくて、古本屋で探し回ったんだよな。短いけれど、これを読めて満足できました。

 佐々木淳子の作品は、一部の電子書籍以外は読めない状態。もっと評価されてもいいと思うのだが。