平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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藤子・F・不二雄『モジャ公』(小学館 藤子・F・不二雄大全集)

藤子・F・不二雄大全集 モジャ公

藤子・F・不二雄大全集 モジャ公

藤子・F・不二雄大全集第3期第5回配本の一冊。モジャラ星のモジャ公ことモジャラ、宇宙ロボットのドンモ、地球人の天野空夫が宇宙へ家出。ロケットに乗り、さまざまな大冒険を繰り広げる。藤子F作品でも人気の高い本格SFギャグの傑作。『週刊僕らマガジン』1969年1号(創刊号)〜1970年35号に連載。さらに『たのしい幼稚園』1970年1月号〜12月号に掲載バージョンをカラーのまま収録。
作者曰く、『21エモン』の二番煎じ。しかし、ホテルと宇宙旅行と分断された形となっている前作に比べ、本作は宇宙への冒険というテーマが一貫している。1話完結ではなく、連載形式ということがあったからかもしれないが、盛りあがる部分と謎、そしてSFチックかつ論理的な謎解きが待ち構えており、さらにギャグも効いているというのだから、面白くないはずがない……のに、なぜか当時は人気が無かったらしい。20年ぐらい早すぎたのかなあ。特に「アステロイドラリー」から「地球最後の日」にいたるまでの作品は、アイディアから落ちに至るまで含め、完成度の高いエピソードなのに。短編はSFファンにも注目されていたのだが、本作についてはどうだったのだろうか。せめてモジャ公の宝星までは行ってほしかった。

本巻は、初めて連載形式の順番で全て収録され、しかも単行本で描きかえられる前のバージョンまで全て収録。さらに『たのしい幼稚園』版まで収録という、まさにいたせりつくせりの一冊。まさに待っていました、という充実の一冊である。

藤子Fでどれか一冊だけ選べと言われたら、間違いなくこの作品を選ぶだろう。文句なしの傑作。漫画ファンでなくても、このアイディアには一度触れるべき。