平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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東川篤哉『仕掛島』(東京創元社)

 岡山の名士が遺した二通の遺言状。一通目の遺言状に従って、一族の面々は瀬戸内の孤島・斜島に集められた。行方を晦ましていた怪しげな親族までもが別荘『御影荘』に招かれて奇妙な空気に包まれるなか、もう一通の遺言状は読みあげられた。翌朝、相続人の一人が死体となって発見される。折しも嵐によって島は外界から隔絶される事態に。相続人探しの依頼を受けていた私立探偵・小早川隆生と遺言執行人の代理を務める弁護士・矢野沙耶香、ふたりは次から次へ奇怪な事件に巻き込まれていく。鬼面の怪人物の跳梁、消える人影、そして一族が秘密にしていた二十三年前の悲劇――続発する怪事の果て、探偵たちの眼前に驚愕の真相が現出する!
 本屋大賞作家が満を持して放つ、謎解きの興趣を隅々まで凝らした長編ミステリ。(粗筋紹介より引用)
 『ミステリーズ1』No.76(2016年4月)~No.87(2018年2月)連載。改稿のうえ、2022年9月刊行。

 

 『館島』からえーと、何年後という設定になるんだ? とにかく舞台は2018年。一応前作から三十年後くらいという設定、でいいのか。前作を読んでいなくても、全く支障はない。
 東川篤哉らしいユーモアは健在。お調子者の探偵と、ツッコミ係の美人弁護士の即席コンビがドタバタを繰返しながら謎を解く展開。当然のことながら、館ものにふさわしいどでかい仕掛けも用意されている。そんな推理をするだけの材料があったのだろうかと考えてしまうのはさておき、怒涛の謎解きは迫力があるし、最後にほろっとするところがあるのはさすが。
 ただ、こんなバカバカしい仕掛け、わざわざ準備するだろうか、という根本的なところにツッコミを入れたくなってしまう。それに動き出した時点で音や振動でばれないか? それに警察を招くようなやり方するかな。過去の事件の後始末が台無しじゃないか。そもそも、二十三年前の事件の動機って明かされていたっけ?
 面白く読めるけれど、バカバカしいと思うかどうかが、この作品の評価の分かれ目になると思う。まあ、このバカバカしさが東川篤哉の魅力と言ってしまえばそれまでなんだけど。最近気付いたし、全部読んでいるわけではないのだけれども、ここ数年の東川篤哉って「謎が解かれる」という面白さがないんだよね。ドミノ倒しで言うと、パタパタ倒れる面白さはあっても、倒れた後に完成される絵がないというか。「本格ミステリ」というよりも「トリックのあるドタバタコメディ」にウェイトを置きすぎ。