平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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マックス・アフォード『魔法人形』(国書刊行会 世界探偵小説全集45)

 

魔法人形 世界探偵小説全集 4

魔法人形 世界探偵小説全集 4

 

 魔力の存在など信じはしないだろうね」旧友ロロの言葉にジェフリー・ブラックバーンは目をみはった。高名な悪魔学研究家ロチェスター教授の屋敷で、まるで中世の魔術が甦ったかのような怪事件が発生しているというのだ。死を予告する不気味な人形が、次々に家族のもとに送りつけられ、すでに教授の妹が謎の転落死を遂げていた。教授の秘書を務めるロロに乞われるまま、ロチェスター屋敷に乗り込んだブラックバーンだったが、その到着の朝、邸内の礼拝堂で長男ロジャーの死体が発見される。死体の胸には、予告どおりナイフが深々と突き刺さっていた……。怪奇趣味横溢の難事件に挑む名探偵ブラックバーンがたどり着いた意外な真相とは?(粗筋紹介より引用)
 1937年、発表。2003年8月、邦訳刊行。

 作者はオーストラリアのラジオ・ドラマ脚本家。ジェフリー・ブラックバーン夫妻の活躍するミステリ・ドラマは600話を超える人気番組になったとのこと。ミステリの方も長編6作があり、1冊を除いてブラックバーンが登場する。本作は第二長編。
 悪魔学研究科、死の予告の人形、連続殺人事件とカーを彷彿させるオカルティズム。ブラックバーンがわからないと叫びながらも犯人に迫る。最後まで誰が犯人かわからない状況も、読者を十分楽しませてくれる。トリックの方は面白みはないけれど、犯人に迫るロジックは面白い。特に遺言状の扱い方が巧い。犯人像はあからさまに怪しいのだが、動機がギリギリまで結びつかなかった。
 ただカーと比べると少々軽いかなという気はした。これはやっぱり、トリックが今一つなところだろうか。もちろんトリックに重点を置いた作品ではないのだから仕方がないのだが、カーに似たような作品を読んでしまうと、期待してしまうのは読者の性だろう。
 ブラックバーンという登場人物がどのような人物か浮かんでこないのが少々残念だが、読んでいて十分楽しめた。