平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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エドマンド・クリスピン『大聖堂は大騒ぎ』(国書刊行会 世界探偵小説全集39)

オルガン奏者が何者かに襲撃され、不穏な空気が漂うトールンブリッジの大聖堂で、巨大な石の墓碑に押し潰された聖歌隊長の死体が発見される。しかも事件当時、現場は密室状況にあった。この地方では18世紀に魔女狩りが行なわれた暗い歴史があり、その最中に奇怪な死を遂げた主教の幽霊が聖堂内に出没するとも噂されていた。ディクスン・カーばりの不可能犯罪に、M・R・ジェイムズ風の怪奇趣味、マルクス兄弟スラップスティックをミックスしたと評される、ジャーヴァス・フェン教授登場のヴィンテージ・ミステリ。(粗筋紹介より引用)

1945年発表。クリスピンの第二長編。2004年5月、翻訳、刊行。



クリスピンは苦手な作家のひとり。英国風の本格ミステリがあまり好きになれないということもあるが、それ以上にあのユーモアが付いていけない。クリスピンはアマチュア作家だったかもしれない(本業は作曲家)が、戦後の英国本格ミステリを代表する作家だったと思う。

それにしても、ヴィントナーとフィールディングの補虫網をめぐるドタバタぶりには頭を抱えるしかなかった。ああいうドタバタは映像ならまだ楽しめるのだろうが、文章で読むと興醒めしてしまう。

巨大な墓碑に押しつぶされるトリックについても、謎自体はワクワクしたが、種明かしをされると本当に可能なのかと首をひねってしまう。それを受けいれたとしても、背景も含め不自然であることは否めない。

とってつけたようなロマンスも含め、何から何まで楽しめなかったのは事実。うーん、やっぱり肌に合わないとしか言いようがない。犯人を突き止めるロジックには、らしさを感じたけれど。