平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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平山夢明『ダイナー』(ポプラ文庫)

 ほんの出来心から携帯闇サイトのバイトに手を出したオオバカナコは、凄惨な拷問に遭遇したあげく、会員制のダイナーに使い捨てのウェイトレスとして売られてしまう。そこは、プロの殺し屋たちが束の間の憩いを求めて集う食堂だった――ある日突然落ちた、奈落でのお話。(粗筋紹介より引用)
 ウェブマガジン『ポプラビーチ』連載。加筆修正後、2009年10月、ポプラ社より単行本刊行。2009年、第28回日本冒険小説協会大賞受賞。2011年、第13回大藪春彦賞受賞。2012年10月、文庫化。

 

 プロの殺し屋たちが集う会員制ダイナーで、ウェイトレスとなったオオバカナコが遭遇する事件の数々。ボンベロが作る料理はうまそうなのだが、目の前で展開される殺人シーンなどは惨たらしい。確かに奈落と呼ぶのに相応しい場所である。というか、食事と暴力シーンばかりじゃないか、これ。正直、殺し屋たちの背景がよくわからないし、作品世界のルールもよくわからない。ただ妙な迫力はあるし、底なし沼にはまったような抜け出せられない妖しさがある。何が何だかわからないが、読んでいて目が離せない。
 読者を選びそうだなとは思うが、大藪春彦賞にはふさわしいという魅力がある。ただ作者が投げかけてくる言葉に従って読み進めればよい、考えるだけ無駄だ、というような作品であった。