平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

文藝春秋編『東西ミステリーベスト100』(文藝春秋)

週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100 2013年 1/4号 [雑誌]

週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100 2013年 1/4号 [雑誌]

]
1985年に実施され、1986年には文庫化された『東西ミステリーベスト100』の改訂版。日本推理作家協会をはじめとする387人から得られた回答の集計結果がここにある。
当時の『東西ミステリーベスト100』はバイブルに近かった。あの頃ミステリを読むのに参考としたのは、この本と『世界の推理小説・総解説』だった。そのひとつ前が九鬼紫郎『推理小説入門』(金園社)だったかな。これらの本のおかげで、それなりに幅広く読むことができたと思っている。
ということで27年ぶりの改訂版が出たわけだが、国内編は新本格が強すぎ。冒険小説、ハードボイルド系が少なすぎる。なんでかなと思ったら、日本冒険小説協会って解散していたのか。知らなかった。大学のミステリークラブや本屋店員に回答させると、新本格が強くなるのも道理か(根拠のない偏見)。新本格やその系譜につながる作品の評論家が増え、ハードボイルドや冒険小説系の評論家が減っている(と勝手に想像)ことも、今回の結果に表れている気がする。
十角館の殺人』『時計館の殺人』あたりは評価高すぎ。『双頭の悪魔』『葉桜の季節に君を想うということ』もこんなに上位か? 『山猫の夏』『猛き箱舟』『白昼の死角』『ベルリン飛行指令』『カディスの赤い星』なんかはもっと上でもいいはず。『殺戮にいたる病』『ハサミ男』がベスト100に入るか? 結城昌治北方謙三大藪春彦生島治郎笹沢佐保陳舜臣森村誠一佐野洋赤川次郎多岐川恭戸板康二あたりの名前が消えているのは残念。今野敏あたりが入っていないというのはどういうことか。逆に新本格が評価されるなら西村京太郎『殺しの双曲線』あたりは入ってもよかったのでは。乱歩賞受賞作が『猫は知っていた』と『テロリストのパラソル』だけというのも少々さびしい。
国内編で意外だったのは、69位の久生十蘭『魔都』。『顎十郎』でも『湖畔』でも『黒い手帳』でもなくて、なぜ『魔都』? どこかでブレイクする要因があったの?
海外作品は最近ほとんど読んでいないからあまり言えないけれど、それでも古典が強い。上位50作なんて、ほとんど入れ替わっていないじゃないかと突っ込みたくなる。なんなんでしょうね、これは。近年に傑作が少ないということはないと思うのだけれども。国内編でもそうだが、スパイ小説がほとんどないな。
国内作品の未読は『レディ・ジョーカー』『OUT』『警視庁草子』『哲学者の密室』『イニシエーション・ラブ』『ダック・コール』『夜よ鼠たちのために』『明治断頭台』の8冊。うち4冊は買ったままだな。そろそろ読むか。海外作品は74冊しか読んでいない。こちらも買ったままという作品が多いのでそろそろ手を付けよう。こうして新刊を買えない日々は続くわけだ(苦笑)。