平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ホーカン・ネッセル『殺人者の手記』上下(創元推理文庫)

  「エリック・ベリマンの命を奪うつもりだ。お前に止められるかな?」バルバロッティ捜査官が休暇に出かける直前に届いた手紙に書かれていたのは、殺人予告ととれる内容だった。悪戯かとも思ったが、無視することもできず、休暇先から署に連絡して調べてもらう。だが同名の人物が五人もおり、警察は半信半疑でいるうちに、一人が遺体で発見されてしまう。予告は本物だったのだ。急いで休暇を切り上げたバルバロッティのもとに新たな予告場が届き……。スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀賞に輝く傑作。(上巻粗筋紹介より引用)
 殺人の予告状は、三通目、四通目と続いた。いずれも宛先はバルバロッティ。彼にはまったく心当たりがなかったが、予告状の件をマスコミに嗅ぎつけられ、自宅に押しかけてきた記者に暴行の被害届を出され、捜査から外されてしまう。そんなバルバロッティを嘲笑うかのように、五通目の予告状には彼のファーストネームと同じ「グンナル」の名が……。さらにバルバロッティの元に送りつけられた手記には、驚愕の事件が記録されていた。二転三転する事実が読者を翻弄する、スウェーデン・ミステリの名手の代表作。(下巻粗筋紹介より引用)
 2007年、発表。同年、スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀賞受賞。2019年、インターナショナル・ダガー賞ノミネート。2021年4月、邦訳刊行。

 

 ええっと、まったく知らない作家ですが、スウェーデンを代表する推理作家とのこと。2003年に講談社文庫から『終止符(ピリオド)』、2019年に東京創元社から『悪意』が出版されている。架空の町マールダムを舞台にしたファン・フェーテレン刑事部長が主人公のシリーズが10作目まで刊行され、『終止符』もそのうちの一つ。本作はグンナル・バルバロッティ警部補シリーズの第2作目で、6作まで出版されている。作者は40作以上の作品を出版し、三十以上の言語に訳されているそうだ。
 本作はバルバロッティの元に殺人の予告状が届けられ、そこに書かれていた名前の人物が次々と殺害されていく。その合間に、犯人らしい男性が書いた、5年前に過ごしたブルターニュ地方でのバカンスの日々の手記が挟まれる。その手記に出てくる名前が、今回の事件の被害者という趣向だ。
 結構凝った趣向になっているのだが、バルバロッティは恋人であるマリアンネと再婚できるかという方に気がとられているようにしか見えないし、そもそも殺人者に振り回されるばかり。最初の展開は面白かったのだが、バルバロッティの不甲斐なさにじれったくなってくる。同僚であるエヴァパックマン警部補たちの方が魅力ないか。そんな風に言いたくなってしまう。確かに最後は物語が二転三転するのだが、事件が長すぎて今一つの感が強かった。
 これも人気シリーズらしいけれど、いったいどういうシリーズなんだろう。そちらの方がすごく気になった。バルバロッティの家族の話が主題なんじゃないか、そんな気がしてくる。