平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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アンソニー・ホロヴィッツ『その裁きは死』(創元推理文庫)

 

その裁きは死 (創元推理文庫)

その裁きは死 (創元推理文庫)

 

  実直さが評判の離婚専門の弁護士が殺害された。裁判の相手方だった人気作家が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた数字“182”。被害者が殺される直前に残した謎の言葉。脚本を手がけた『刑事フォイル』の撮影に立ち会っていたわたし、アンソニーホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンによって、奇妙な事件の捜査にふたたび引きずりこまれて──。年末ミステリランキングを完全制覇した『メインテーマは殺人』に並ぶ、シリーズ第2弾! 驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。(粗筋紹介より引用)
 2018年、発表。2020年9月、邦訳刊行。

 

 『メインテーマは殺人』に続くホーソーンホロヴィッツ・シリーズ第2作。作品中の時系列でも、ホロヴィッツが『メインテーマは殺人』を書き上げた直後の事件ということになっている。
 今回は謎のメッセージが残され、それは被害者が扱った裁判の相手である人気女流作家の句集の182番目「君が息 耳にぞ告ぐる 裁きは死」に繋がって本書のタイトルとなっている。前作同様フーダニットを扱った作品となっており、いかにもというような容疑者が出てくる。ホーソーンの名推理と、ホロヴィッツの迷推理を楽しむことはできるのだが、何もわざわざ自分をここまで落とさなくても、という気はする。それに、作者自身をワトソン役にする意味があまり感じなかった。この点に関しては、続編が出るともうちょっと明確に描かれるだろうか。
 ホーソーンもガラの悪いホームズという感じで相変わらずうざいのだが、それ以上に気になるのは、ここまで仲の悪いホームズ&ワトソン役も珍しいということ。この点についても、もうちょっと明確な狙いがあるのか、気にかかる。
 事件の謎よりも、ホーソーンホロヴィッツの関係性に注目してしまい、肝心の事件が今一つというのはちょっと残念。面白いと言えば面白いが、前作に比べると目新しさが減った分、退屈な部分が増えたと言える。何も内輪ネタを連発しなくても、普通の本格ミステリに集中すればよいのに、と思ってしまう。まあ、なんだかんだ言いながら次作も読んでしまうだろうが。