平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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深木章子『鬼畜の家』(原書房)

鬼畜の家 (a rose city fukuyama)

鬼畜の家 (a rose city fukuyama)

  • 作者:深木章子
  • 発売日: 2011/04/25
  • メディア: 単行本
 

  「おとうさんはおかあさんが殺しました。おねえさんもおかあさんが殺しました。おにいさんはおかあさんと死にました。わたしはおかあさんに殺されるところでした……」 保険金目当てで家族に手をかけてゆく母親。その母親も自動車もろとも夜の海に沈み、末娘だけが生き残ることになった。母親による巧妙な殺人計画、娘への殺人教唆、資産の収奪…… 信じがたい「鬼畜の家」の実体が、娘の口から明らかにされてゆく。(内容紹介より引用)
 2010年、第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。2011年4月、原書房より単行本刊行。

 作者は元弁護士で、60歳でリタイア後、執筆活動を開始している。


 正直、まったくノーマークの新人賞なので、なぜ手に取っていたのか全然覚えていない。調べてみると、受賞後も結構著書を出しているのね。本格ミステリ大賞の候補になっているのに、全然調べもしなかったし。
 唯一生き残った末娘からの依頼を受け、元刑事で私立探偵の男が関係者に聴いていくうちに、北川家で起きていた「鬼畜の家」の実態が明らかになっていく。まあ、はっきり言っちゃうとよくある手法。構成で驚く部分がないので、あとは中身がどうかな、というところ。殺人を繰り返し、保険金を得ていくというパターンはありがちだが、弁護士出身の作者らしい味付けや法律知識が出てくるとこは、ほかの作品とちょっとした違いの味を提供している。ただ、ラストの謎解きはありがちな展開でそれほど驚くものではなかった。しかも、頭の中で浮かべてみると無理だろうと思わせる内容で、かなり興覚め。この手の作品だったら、もうちょっとリアリティが欲しかった。
 元弁護士という割には文章の硬さが少なく、意外と読みやすい。せっかくだから知識を生かした作品を書いてほしいと思った。