- 作者: 前川 裕
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/02/18
- メディア: 単行本
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2012年、第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞。応募時タイトル『CREEPY』。2012年2月、単行本発売。
作者は大学教授で、比較文学、アメリカ文学専攻。2003年に『怨恨殺人』が第7回日本ミステリー文学大賞新人賞の最終候補となっている。
大学教授が書いた作品で、しかも主人公も犯罪心理学の大学教授。どんな堅苦しい作品だろうと思って読んでみたが、帯にあるとおり「展開を予測できない実に気味の悪い物語」だった。タイトルのCREEPYは、「(恐怖のために)ぞっと身の毛がよだつような、気味の悪い」という意味。郄倉の高校時代の同級生である警視庁捜査一課の野上が連絡をよこし、8年前の一家三人行方不明事件についてアドバイスを求めてくる。しかし野上がなぜアドバイスを求めてきたのか。そして西野の家で中学生の娘が虐待されていることに郄倉の妻が気付く。そして娘は訴える。「あの人はお父さんじゃない」と。それは想像を上回るおぞましい事件が発覚する始まりだった。
隣の人が何をしているかわからないなど、都会ではよくある話である。しかし、隣家の人物が犯罪者であるなら話は別だ。ましてやそれが、天才的な犯罪者であったとしたら。少しずつ明らかになっていく過去の犯罪。そして少しずつ迫ってくる犯罪者の恐怖。章毎に意外な展開が待ち受けていて、読者を退屈させない。そして何よりも上手いと思ったのは、この犯罪者の描き方。とにかくおぞましい。気持ち悪い。タイトルのクリーピーとは上手く名付けたものだ。
もちろん、新人ならではの問題点もある。人物描写の硬さは仕方が無いが、メールとか学生を巻きこんだ部分はあまりにも配慮がなさ過ぎ。そこまで登場人物たちも単純ではないだろうと思いたい。
最後の解決部分も含め、構成はよく考えられているといってよい。もうちょっと評価が高くてもよかったと思うのだが。
これが映画化されるというのだが、あのおぞましさをどこまで表現できるのだろうか。最も観たらうなされそうなので、映画館に行くつもりは全然無いのだが。
日本ミステリー文学大賞新人賞はマジック2。うち1冊は手元にある。2年前に横溝賞の全冊制覇を目標にしていたのだが、こちらが先になりそう。横溝賞は古い作品がなかなか見つからないので、マジック6で止まっている。