平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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春口裕子『火群の館』(新潮社)

火群の館

火群の館

 

  高台に建つマンションで共同生活を始めた明日香と真弓。その新しい部屋で奇妙な出来事が次々に起こる。バスルームに残された得体の知れぬ毛髪、新聞受けからこぼれ落ちる蛆虫……。そして真弓が浴槽で謎の死を遂げる。彼女の恋人も失踪し、残された手紙には「僕たちは許されるのか」という走り書きが。やがてマンションの隣人たちは不気味な行動を起こし、暗く湿ったボイラー室の扉が開かれる……。(帯より引用)
 2001年、第2回ホラーサスペンス対象特別賞受賞。2002年1月、新潮社より単行本刊行。

 

 司法試験を目指す阿南明日香が主人公。2週間前から共同生活を始めた世良真弓との腐れ縁が大学時代から七年目ということは、25歳かな。粗筋紹介で書かれている失踪した真弓の恋人は、大学時代のサークル仲間・山崎浩太郎だが、実際は大学卒業後に別れている。明日香は同じ仲間で、今は会社員の秀と付き合っている。明日香の周りで異変が起こり、真弓が死に、浩太郎が失踪。そして明日香と秀の周りに魔の手が迫る。
 読み終わった感想は、割とストレートなホラー物という印象。なぜ明日香たちの周りで異変が起きるのかという謎解き、というか被害者自身の捜査シーンが加わっている点は結構読めた。ただその異変が起こる理由はわかっても、どうやって起こすのかという部分がかなり曖昧。もやもやしたまま終わってしまった。また肝心のホラー部分、つまり明日香たちに起きる怪異現象の怖さが今一つ。蛆虫が湧いてくるシーンなんて、本来ならもっと背筋がぞくっと来ないといけないんだけどねえ。上っ面の恐怖しか書けていない点が残念。
 とりあえず最後まで読んだが、何をやりたかったのかわからなかった。ごちゃごちゃしすぎ。もう少し内容を整理できていれば、その分描写に文字を回すことができたと思う。