- 作者: 赤星香一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/08/07
- メディア: 新書
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2009年、第41回メフィスト賞受賞。同年8月、刊行。
作者名を見て「怪物ランド」かよ、って突っ込んだこと(赤星昇一郎ですな。そろそろ再結成しないかな……)はさておき、折り返しで「この小説には、作中で解明されていない秘密が隠されています。その秘密に気づいたあなたは、なぜ事件が起こったのか、本当の理由を知ることでしょう」と書かれていたので、気になった。まあ、作者が広言する内容はだいたいが外れなのだが、今回は「解明されていない秘密」がなんだかわからなかったので、どう評価すればよいか微妙である。そもそも、解明されていない点が多すぎることが問題である。
「虫とりのうた」通りに次々に人が死んでいく。死んだ人物はいずれも、少女が赤井に助けを求めた時に居合わせた面々だった。その面々のいずれもが「虫とりのうた」に絡んでいるというのも奇妙な偶然だが、これが単なる偶然なのかどうかがわからない。そもそも、なぜ彼らが「少女を男に返せ」と言ったのかも不明。途中で出てくる大予言者の予言歌があまりにもしょぼい。「かしでえんまなおえましん」という呪文には、アナグラムが見え見えで苦笑するしか無かった。赤井がずっと家に居るのに何も気づいていない点もおかしい。赤井の妻がカップを二つ出した理由がわからない。犯人は見え見えだが、なぜ今の時点で殺人を犯す動機がわからない。平仮名で名前を書くと似通っている点も、結局何を言いたいのかがわからない。何もかもひっくるめて、それが「ホラー」だと作者が言いたいのなら、あまりにも都合が良すぎる。登場人物のいずれもが自分勝手すぎるし、全く共感できないというのもどうかと思う。
ホラーならメフィスト賞ではなくホラー大賞に送ればいいのにと最初は思ったが、これでは最終候補作に残ることは無理。駄作とまで言うつもりはないが、編集者がこれを推した理由はさっぱりわからなかった。