平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ? 俺はやっていない――。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。(粗筋紹介より引用)
2007年11月、新潮社より単行本書下ろし刊行。2008年、第21回山本周五郎賞受賞、本屋大賞受賞。『2010年12月、文庫化。



首相爆殺事件の濡れ衣を着せられた青年が、警察の追っ手から必死に逃げる話。逃げる話は面白いけれど、肝心の事件について真相も結末も書かれていないというのは呆気にとられた。それは無いだろうと言いたい。

会話のやり取りなんかは巧いなと思うが、いくら犯人ではないと思っていても、もしかしたら今の生活を壊される可能性があるのに、数年間会っていない友人にここまでするか、って思ってしまう。ピンチになると通りすがりの人が助けてくれるなど、ご都合主義満載。追っている警察やマスコミだって、もう少し疑問に思う人がいたっておかしくないだろうけれどね。車のバッテリーの件は、笑うしかなかった。バレバレだろ、おい。

作者が「物語の風呂敷は、畳む過程が一番つまらない」と思うのは自由だけど、いくら模様が綺麗だとはいっても畳まれない風呂敷を見せられる読者は辛い。もちろん、それが気にならない読者がいることを承知で言う。読み終わって、欲求不満しか残らなかった。

新人賞に送られたら、間違いなく二次予選ぐらいで落ちるだろう。それを有名な作者が書いたら絶賛される。わからんなあ。