平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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雫井脩介『犯人に告ぐ』上下(双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

闇に身を潜め続ける犯人。川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった――史上初の劇場型捜査が幕を開ける。第7回大藪春彦賞を受賞し、「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝くなど、2004年のミステリーシーンを席巻した警察小説の傑作。(上巻粗筋紹介より引用)

犯人=〔バットマン〕を名乗る手紙が、捜査本部に届き始めた。巻島史彦は捜査責任者としてニュース番組に定期的に出演し、犯人に「もっと話を聞かせて欲しい」と呼びかけ続ける。その殺人犯寄りの姿勢に、世間および警察内部からも非難の声が上がり、いつしか巻島は孤独な戦いを強いられていた――。犯人に"勝利宣言"するクライマックスは圧巻。「普段ミステリーや警察小説を読まない人をも虜にする」と絶賛された、世紀の快作。(下巻粗筋より引用)

『小説推理』(双葉社)2003年2月号〜2004年2月号まで連載。2004年7月単行本化。2005年、第7回大藪春彦賞受賞。2007年9月、文庫化。



ベストセラーとなり、映画化もされた作品。文春1位ということもあり、内容は色々と聞いていたのだが、どうも処女作や二作目の印象が悪かったせいか、手に取ろうと思わなかった作品。何となく手に取ってみたら、意外に面白かった。6年前の誘拐事件について少々長いことと、特に結末におけるご都合主義には引っかかるところがあるものの、テンポよく読むことが出来る。事件そのものよりも、事件を巡る人間関係が中心となっており、官僚と叩き上げの差なども過不足なく描かれている。ニュース番組の視聴率合戦の下りにはなるほどと思わせるものがある。巻島や津田の台詞には泣けるものがあるし、最後に巻島が「〔バットマン〕に告ぐ」と勝利宣言をするシーンはぞくぞくっと来るものがあった。

これだけ世間を騒がせた事件の割には最後が呆気ないのは少々残念。まあ、現実の犯人も似たようなものと思われるから仕方が無いか。

ただ、子供の連続殺人という題材は、個人的に苦手。こういうときは、記号的な人物の描き方をしてくれてもいいのに、と思ってしまった。